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プロローグ side RYO
ホテルのレストラン。
夜景が人気のこの場所は、土曜日の夜ともあって、ドレスアップをした客達が思い思いに楽しんでいた。
コース料理もほぼ終わり、給仕が、デザートとコーヒーを先ほど運んできた。
今日は会った時から、いつもより硬い表情。いつか言われると思っていた台詞をとうとう言われてしまった。
「あの。こういうの、やっぱりよくないと思うので、もう会いません。今まで、ありがとうございました。」
事前に準備しておいたと思われる、一万円札をテーブルに置き、彼女が席を立つ。
他のテーブルの誰も、気づいていない。
まるで彼女が居たのが、夢や幻だったかのように、デザートとコーヒーと、俺と一万円札だけが残されていた。
俺は、止めることも、追いかけることもできずに、彼女が幻となって消えるのを見送った。
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