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11. side RYO
その日は、麗が新しいオフィスの打ち合わせに来る日だった。俺の母親も使うオフィスになるらしく、息子の俺に頼みたいとのことだった。親父も、どうにかして、母親と接触を持ちたいらしく、これを好機と考え、俺がデザインをできるように調整し、凝りもせず母親に連絡を取ろうとしているらしい。
俺は、彼女との関係がうまくいっていることで、気を抜いていたんだ。
仕事の話も大体済ませ、砕けた口調になっていく。
「そういえば、伶、あの気になる彼女とはどうなってるのよ。」
「あぁ。おかげざまで、なんとか。」
誤魔化したのか面白くなかったらしい。
「喜怒哀楽の乏しい、恋愛初心者の伶でも、うまくいくようアドバイスしたお姉さまに、その態度はないんじゃないの」
「一応感謝はしてる。」
顔を寄せて、下から睨みつけられた。
「体は重ねたの?」
「答える義理はない。」
「心配なんじゃない。あの部屋に彼女をよんだのか。」
「麗の言うように自宅には誘ってないよ。」
「それならいいけど、伶の部屋を彼女が。」
「大丈夫だよ。彼女とは、いつも外であってるから。」
姉の言葉を遮り、姉の望む言葉を言った。空っぽな部屋に空っぽな男が住んでいるなんて、彼女には、知られたくない。自宅で話をするような感じで話をしていたら、ドアをノックする音が聞こえた。
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