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「どうぞ。」
そして、入ってきた人物が彼女で、その彼女の表情が青ざめているに気が付き、胆がすっと冷えた。俺は今、何の会話をしていた?聞かれたくないことがありすぎて、彼女を直視できない。
「コーヒーをお持ちしました。」
まずは麗の前にコーヒーを置き、その後、俺の前にもコーヒーを置く。
「あら。あなた、もしかして?」
俺の態度で、姉に俺の想い人であることがばれたらしい。
姉は、とてもにこやかな笑みを浮かべ、俺と彼女を見比べている。
「冴島さん、余計な事言わないでください。」
先に止めたが、姉には何の意味もない。
「なにも、言ってないじゃない。あなた、お名前は?」
「河合芽唯です。」
「そう。芽唯さん。あなた、可愛いのね。良ければ、今度二人でゆっくりとお話でもしない?」
「それが余計なことだというのです。河合さんコーヒーありがとう。もう下がっていいよ。」
先ほどの会話を聞かれたかもしれない動揺と、姉の態度に苛立ち、とても冷たい声がでた。
彼女はますます、顔を青ざめ、部屋を出ていく。
「ねぇ。あの子でしょ。あんたの好きな子。」
姉の一言に苛ついた。
「もう、自分の会社に帰ってくれ。」
そういって、彼女の入れてくれたコーヒーを飲む。沸騰してないお湯だったのか、不安も、動揺も、すべてコーヒーと一緒に飲み込んだせいだったのか、コーヒーは酷くぬるく、苦かった。
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