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三日ほど前に姉が来た。
「なにここ。ただでさえ暗い部屋が、真っ暗なんですけど。」
先日、チャイムも鳴らさずやってきた姉。もう、それを指摘する気力もない。
「あぁ。」
「あぁじゃないわよ!携帯に電話しても出ないし、会社に行ったら、自宅で仕事しているっていうし。うちのオフィスのデザインどうなってるの!」
「今やってる。」
そういって姉が覗き込んだ、紙は白紙でなんにも書かれていない。
「これほどとはね。」
姉のあきれるような顔も、どうでもよかった。
「ちゃんと聞いたの?何でこうなったのか。」
「聞かなくてもわかる。あの時の会話を彼女が聞いたんだ。俺が嫌になったに決まっている。」
「そうかもしれないけど、違うかもしれないでしょ。ちゃんと、相手に聞きなさいよ。」
「いいよ。ほかっておいて。」
いよいよ俺は、白紙の紙を放り出し、目に手を当て、ソファーに足をのばす。
「いい大人がいつまでも腐って!!好きにしなさい!」
鍵が閉まって、姉が怒って出ていくのが分かった。
こういう時、合鍵があると便利だよな。
どうでもいいことを思いながら、また、彼女のことを思い浮かべる。
まだ、紙には、一つのアイディアも、かかれていない。
今日もまた、白紙の紙をみて、彼女のことを思い悩む。
一人の時には、一人が普通だったのに。彼女を知った後では、彼女を考えない方が難しい。
ソファーに足を投げ出し、天井を見上げる。目を閉じているので、何も見えないが、はっきりと失った彼女の笑顔が浮かんでいた。
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