13. side メイ

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奥にある座敷、離れとでもいうべきか、庭を超え、完全な個室だった。 もう別れたのに、彼の婚約者が今更何の用事だろう。 付き合っていた時のことを持ち出され、慰謝料を請求されるとか? 私は、目の前の彼女の用件が何か、全く見当もつかなかった。 つくとすれば、非難されることだけだけど。 大将が、お通しとお料理をもってきた。 料理が並び、率直に言われた言葉に怯んだ。 「突然だけれど、あなた氷川とは、どういうお付き合いを。」 こんな直球で言われると思わなかった。 手を握りしめ、胸の痛みを逃がす。どれだけ責められるか分からないけど、でも、今この瞬間だけは、逃げたらだめだと思った。 どんなことになっても、自分のこの正直な気持ちだけは、ちゃんと伝えたい。 「彼とは、真剣にお付き合いをしていました。」 彼女は、驚き、少し嬉しそうにした。 「でも、今は、付き合っていないのでしょう?」 「はい。先日、私から別れを告げました。」 「それは、どうして?」 どうしてとは、不思議なことを聞くなと思った。 家に行き交う、お付き合いをしている人物が目の前にいるのを知ったから別れたというのに、どこまで私を惨めにさせたらこの人は気が済むのだろう。 だけど、そんなのは、見せたくない。この人にだけは知られたくない。 私は気丈にもちゃんと、受け答えた。 「先日、コーヒーをお持ちした時、冴島さんと、氷川さんが会社で話をするのが聞こえてしまいました。体を重ねたのか、自宅に誘ったのかと冴島さんが聞く声が。彼は、家には呼んでいないと答えました。愛する二人の会話を聞き、私は邪魔だと思ったから身を引いたのです。」 「やはり、あの時の会話が聞こえたのね。でも、それなら、なぜ。私たちの関係が分かったでしょうに。」 「私が聞こえたのは、体を重ねたのかと、聞かれた所からですので。」 「まさか、あなた、私と伶が付き合っていると思っているの?」 彼女の驚きに、私のほうが驚いた。 彼の婚約者が、体の関係を持った女を呼び出したのでなければ、今のこの状態は一体なんだ。 大将の作ってくれた料理は、並べられていたが、何も答えてくれなかった。
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