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16. side メイ
「俺、本当は、こんな男だよ。」
「え?」
彼は、部屋を見まわした後、頬に置かれた手を引いた。
「俺、話したことなかったけど、小さい頃から、一人の事が多かったんだ。」
「すみません。今日、冴島さんからお話を聞きました。」
彼以外の人の口からきいたことに、少し罪悪感を覚えた。
「そっか。なら、聞いたと思うんだけど、俺、小さい頃から一人に慣れてたから、人と付き合うのもうまくないし、そういうのよく分からない。」
ただ彼が話すのを聞いていた。
「この部屋、どう思う?」
私は正直に答えた。
「夜景はきれいだし、私の部屋の数倍は広いし、おしゃれで、とっても素敵なお部屋だけど、どこか寂しいなと思いました。」
「この部屋、俺がデザインしたんだ。姉にも言われたけれど、無機質だとか、生活感がないだとか、この部屋は俺に似て寒々しいだとか言われる。俺、人がいる温かい家庭を知らないから、そういうデザインもかけない。」
彼は、話すのが辛いのか、目を伏せ、手を握りしめている。
「俺、芽愛に知られたくなかった。こんな空っぽな部屋に住んでることも、その中にいるのが空っぽな人間だってことも。だから、芽愛をこの部屋に呼ぶこともできなかった。別れを告げられたのも、姉貴との話を聞かれて、そんな男と付き合うのが苦痛だからだと思った。」
私は聞いていられなくて、彼の握りしめている手に、自分の手を重ねた。
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