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エピローグ side RYO
彼女が腕の中にいることが、やっぱり夢のようだった。
彼女は、俺のコンプレックスを、全部聞いたうえで、それでも俺が好きだと言ってくれた。
ようやく、俺たちは、本当の恋人同士になれた。
「芽愛。ちょっとだけ、聞いてもいい?」
「何?」
彼女の頬に手を当てて、顔を覗き込む。
「姉貴から、何聞いたの。」
彼女の表情が、一瞬固まり、ふいと、目をそらされた。
なにか、思うところがあるらしく、気まずそうな顔をしている。
「えっと。小さい頃に離婚をして、お父さんに引きとられたことは、聞きました。そして、ずっと一人でいた事。」
「うん。ほかには?」
「冴島さんが、実のお姉さんであることも聞きました。それで、お父さんは、デザイン氷川の社長だということも。あ、でも、私誰にも言いません。みんな知らないってことは、あまり知られたくないことだと思うので。」
「俺がデザインに専念したくて、社長や経営陣と、設計の部長しか知らない事だから、そうしてくれると嬉しいけど、それは、芽愛に任せる。」
「はい。氷川さんが、嫌なことはしません。」
「まだある?」
「いえ。とくには。」
芽愛の目が泳いで、彼女が嘘をついたことが分かった。
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