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第4話 誘い
「ねぇ、おばちゃん。」
「なんだい?」
「前に八嶋さんが来た時、八嶋さんには気をつけるんだよって言ってたけど、あれ、どういう意味?」
「私はね、鼻が良いんだよ。霊感的にもね、人間、色んな匂いがあるだろ?なのに、あの女は何もしなかった。どうしてだと思う?」
「さあ、何で?」
「あの女は、過去に誰かを殺しているんだよ。血の匂いが半端じゃないんだ、普通の人には分からない匂いだよ。」
「!?」
「修也、本当に、あの女には気をつけるんだよ、何があっても家族を守るんだ、でないと・・・。」
「殺されるよ。」
祖母が言った言葉に、田中は、目を見開いて驚くばかりであった。
家の外には女が立って、じっと見ていた。女は、田中の部屋を見つめて睨みつけていた。
※※※※※
「・・・・止めて、お願いよ、私謝ったでしょ?あの時は、幼かったのよ・・・!?本当に悪かったと思ってるわよ、ねぇ、お金が欲しいの?お金はいくらでもやるわよ!!だから、解放してよ!?」
【まだだ、お前はまだ其処にいてもらう。】
「ぎゃああああ痛い、痛い誰か、誰か助けてよぉぉぉぉぎゃあああああああ!!」
【クスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスクスま~だだよ♪てるてる坊主、明日は晴れるかな~♪】
「・・・・・・。」
【あれ、動かなくなっちゃった。まだまだ楽しめると思ったのに残念、これからだよ~ゲームは。クスクスクスクスクスクスクスクス。ねぇ、早くおいでよ。】
牢獄のなかで一つの椅子に縛られた女は、ショック死で、死んでいた。犯人は愉快そうに残虐な笑いを起こしながら、けたけたと道化師の様に、笑う。
※※※※※
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「修也~電話よ。」
「誰から?」
「八嶋さんよ。」
「・・・もしもし。」
「あ、田中さんですか?」
「八嶋さん?」
「お茶が入ったので良ければ、私の家に来れませんか?話たいことがあるんです。」
女の誘いに、田中は、女に返答する。
「私は良いですけど・・・、よければ、妻と娘も誘いましょうか?」
「いえ、田中さんだけで良いですよ。」
女は、田中だけで良いと告げる。田中は、渋々了承し、女に告げる。
「分かりました。えっと、住所教えてもらって良いですか?俺、道が分からないもんだから・・・。」
「良いですよ。●●の・・・。」
「あそこですね、分かりました。もう少し、待ってもらって良いですか?」
「分かりました、じゃあ、待ってますね。」
プツリと電話が切れる。田中は、重い溜息を零す。
「どうしたの、溜息なんか零して。」
「何か、話しづらいっていうか・・・。」
「ほら、行った、行った。はい、土産物よ。八嶋さんに渡して頂戴。」
「分かったよ。」
「行ってらっしゃ~い。」
妻に手を振られ、田中は渋々、女の家に向かうことにした。
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田中が着いた場所は、高級住宅街の一軒家であった。馴染みがない田中には、見つめるだけしかなかったのだが、案外、時間はかからなかった。
「此処か。」
八嶋という名前の札を見つけ、恐る恐るインターホンを鳴らす。
【ピンポーン】
「すいません、田中ですけど・・・。」
「あ、田中さんですか、鍵開けてますのでどうぞ入って下さい。」
「はい。」
女にそう言われ、田中は部屋へとゆっくり入る。中に入ると、リビングは広く、家具が華やかに並んでいた。女が田中に言う。
「わざわざすいません。田中さん、呼び出してしまって・・・。」
「いいですよ、あ、妻から、八嶋さんにとお土産に持って来ました。」
「わあ、ありがとうございます。」
女は受け取り、嬉しそうに笑う。女は田中に言う。
「どうぞ、ソファーに腰かけて下さい。」
「すいません、失礼します。」
田中は、腰かけると率直に話す。
「あの、話ってなんですか?」
「あの、麻衣ちゃんのことなんですけど。」
「麻衣?麻衣がどうかしたんですか?」
「前に、おうちに伺った時、麻衣ちゃんと遊んでたんですよ。その時に、可笑しなことを言っていたから、気になったんですよ。」
「可笑しなことですか?」
「【足音】が聞こえるって。」
「足音?」
「夜によくドタドタ聞こえるみたいだって言ってたんです、声も聞こえるって。」
「!?」
「てるてる坊主、明日は晴れるかな~♪って。」
女が歌うと、嫌に不気味に聞こえてしまう田中には、ただ、耳を傾けるしかなかった。
「俺も、娘と遊園地の帰りに足音が聞こえたんです。誰もいない筈なのに、足音がカツカツカツって速さが増すのが怖くて、逃げたんですよ、妻も、祖母も、疲れているだけっていうだけで、誰も信じてくれなかった。」
「そうだったんですか、さぞ怖かったでしょうね。」
「はい、怖かったですよ。・・・すいません、お手洗い借りても良いですか。」
「良いですよ。真っすぐ行って左にありますよ。」
「ありがとうございます。」
田中は、そそくさとお手洗いに向かう。あの場所にずっといれば、気が変になると思ったから。
※※※※※
田中は、お手洗いを済ませた後、ある一つのドアが目に入った。気になって、恐る恐るドアノブを開けようとしたその時------------------------
「何してるんですか?」
女が立っていた。女は田中を無表情に見ていた。女がもう一度、問いかける。
「何してるんですかと聞いているんです。」
「す、すいません目に入ってしまって気になったんです。この部屋が。」
「・・・そこには別に何もありませんよ。田中さんて好奇心ありすぎですよ、もしこのなかに誰かがいたらどうするんですか?」
「え?」
嘘だ、だって、この部屋に入ろうとした、女の声が以上に冷たく感じたのだから・・・。女は、苦笑交じりに田中に言う。
「冗談ですよ、さあ、リビングへ行きましょう。」
「あ、はい・・・。」
「田中さん。」
「はい。」
「子供は目を離したら直ぐにいなくなりますよ。」
「・・・どういう意味でしょうか?」
「深く考えたらいけませんよ、子供は純粋で、無垢な子達ばかりですから。」
女の言葉にただ、田中は疑心暗鬼になった。この女は一体、何者なのかと・・・。
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