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第5話 遊びに来た来訪者
それは、田中が女と会ったその真夜中に起きた出来事である。
「貴方、ちょっと起きて。」
「どうしたんだ?」
妻が、田中にあせった様子で話しかける。
「何か、音がしない?」
「音?」
「ドタドタドタって。」
「気の性じゃないのか?」
「本当なのよ、・・・心配だから私、麻衣の所に行ってみるわ、貴方も音がする所に行ってきて頂戴。」
「分かった!!」
「ちょっと、誰かおらんかねー!!」
「おばあちゃんの声だわ。」
妻が声のする様に、向かう。田中は、物音がする方へ向かった。
田中は、音がする方へ向かったのは、何の変哲もない物置小屋だった。明かりを点けて、中に入るが、見渡しても誰もいない。
「誰もいないじゃないか。」
田中がそう漏らした直後、妻の声がかかる。
「貴方ー!!ちょっと来て!!」
「どうしたんだっ!?」
急いで田中が向かうと、妻と祖母があせった様子で田中に言う。
「隣の部屋からドタドタドタドタ聞こえて、麻衣の部屋で何かあったのかと、慌てて起きてドアを開けようとしても開かないんだよ。」
「私も、ダメだったわ。」
田中も、ドアを開けようしたが、びくともしなかった。ドアを叩きながら、田中は、麻衣に話しかける。
「麻衣、麻衣!!いたら返事をしなさい!!」
「あははは!!」
「中で何が起きているの・・・?」
「麻衣、返事をせんかえ!!」
「おばあちゃん・・・?」
麻衣の声がかかる。祖母はゆっくりと麻衣に話かける。
「ドアを開けてくれんか、麻衣。一体そこで何をしているんだい?」
「遊んでるのてるてる坊主と」
「てるてる坊主だって・・・?」
祖母は驚きの声を上げる。
「てるてる坊主って、あのてるてる坊主?」
妻が不思議そうに問いかける。
「まさか、あの女とまた会ってたのかい麻衣?」
「うん、お姉ちゃんはなんでもくれるよ。」
突如、ガチャリと鍵が開く。田中達は、中に入ると、麻衣は明かりも付けず、窓を開けててるてる坊主を見つめて佇んでいた。
「麻衣、こんな時間に遊ぶんじゃない、もう、寝る時間だぞ。」
「だって、てるてる坊主が話しかけてくるんだもん。遊ぼうって。」
「・・・。」
「心配したのよ、麻衣。鍵なんか閉めて・・・。」
祖母の目つきは険しく睨みつけている。ただならぬ異様な空気に、田中は、麻衣を抱きしめ頭を撫でる。
てるてる坊主がゆらゆらと揺れていた。
第6話 八嶋美雪
「ふんふんふ~ん♪」
少女は、制服姿で学生用の鞄を肩にかける、ストラップにはいくつもちゃらちゃらと付けている。るんるん気分で街中を歩く。革靴のコツコツを鳴らしながら、金髪で肩にかかるくらいのミディアムヘアーで前髪がかかり、いわゆるギャル風の女子だった。ピンクのマフラーを後ろでリボン結びをしている。
少女は、ぶるりと振るえて肩を抱きしめながら叫ぶ。
「あ~寒い!!・・・っと、此処かな。」
少女が辿り着いたのは、保育園だった。
少女は、にやりと笑いながら呟く。
「見つけた、田中麻衣。」
※※※※※
「田中。」
「何?」
「お前、最近、寝てるのか?隈が酷いぞ。」
「そんなに酷いか?」
「おう、もう今日は早退しろ。ふらふらだろお前、帰って休んで来い。俺から上司に言っておくから。」
「ありがとな長島。」
「借りは返したぞ。」
「はいはい。」
長島が、田中ににやりと笑い、背中をぽんと置く。田中はゆっくりと身支度を整え、家へと戻るのだった。
※※※※※
ロビーの中に歩いている田中だったが、途中、女に会った。
「田中さん、大丈夫ですか?顔色が悪いですけど・・・・・・。」
「大丈夫ですから。」
「でも・・・。」
「大丈夫だって言ってるだろ!?」
女が驚いて、田中を怯えた目で見つめる。田中は、はっとして女に話しかけるが、女が先に話す。
「す、すいません私・・・・・・。」
「良いですよ、俺が悪かったんで、ちょっと調子悪くて、失礼します。」
田中は、足早に去る。八嶋はただ、田中の後ろ姿を見つめていた。
田中は、昨日といい、八嶋の言動が頭のなかでぐるぐるとまわり、焦りと苛立ちが増していた。
「くそっ。」
※※※※※
「此処に、コインがあります。そしたら、このコインがある生き物に変わります。それは、なんでしょう~か?」
「うさぎ!!」
「ねこ~。」
「カエル!!」
「残念、正解は~これでした。」
少女の手には、白い鳩が現れ、鳩は少女の肩に止まる。その合図で、歓声が鳴る。
「わぁ、おねえちゃんすごい!!」
「すげー!!」
「どうやってしてるの!?」
「まだまだこれからだよ~♪」
少女は、次々とマジックを披露する。子供達には、違う世界に入り込んだように、目を輝かせる。
「わあ、サーカスみてるみたい。」
「すごい、すごいー!!」
やがて、終了の合図で、拍手の歓声が鳴り響く。
※※※※※
少女はマジックショーを終え、片付けを始める。
「おねえちゃん、すごいね、あれどうやってしているの?」
「ムフフフ~実はね~♪」
「うんうん。」
「内緒なの~教えな~い♡」
「え~なにそれ、おしえてよ~!!」
「あらあら、麻衣ちゃん、美雪ちゃんともう仲良くなったの?」
保育士さんが声をかける。
「へ~麻衣ちゃんって云うんだ、私、美雪っていうの、よろしこ。」
「たなかまいです。よろしくね~♪」
麻衣と、美雪は、握手を交わす。
「よろしく~。」
「まいちゃんは、迎えが遅いね~。パパとママはどうしたの?」
「おかあさん、おとうさんしごとがあるから、いつもおそいの。いっしょうけんめいしごとしているから、だから、まい、がまんしてる。」
「ふ~ん、麻衣ちゃんは、偉いんだね~。」
「うん、まいはえらいの!!」
「じゃあ、麻衣ちゃんにこれをあげるよ。」
「なに?」
少女が手渡したのは、赤い飴玉だった。
「これで我慢してね。」
パチリと、ウインクを決める。麻衣は、嬉しそうに少女を見上げ言う。
「わぁ、おねえちゃん、ありがとう!!」
「ごめんなさいね、美雪ちゃん。また何時でもいらっしゃいね。」
「良いんですよ、んじゃ、そろそろ行きますね私。」
「ばいば~い。」
「またね。」
「あ、おねえちゃん!」
「何~?」
「おねえちゃんのうえのなまえなんていうの?」
「八嶋美雪(やしまみゆき)だよ。」
「みゆきおねえちゃんまたね~!!」
「またね~ん♪」
ひらひらと手を交わし合うと、少女は、歩き出す。るんるん気分で歩き出す。そして、歌を唄いだす。
「ふんふんふ~ん。あの子が欲しい、相談しましょ、じゃあ、そうしましょ、そうしましょ~♪」
妻が、急いでいる様子を、美雪はちらりとすれ違う。美雪は目を細めながら言う。
「あの子が欲しい・・・♪」
「麻衣、ごめんね遅くなって、パパが熱出しちゃって、看病してたの・・・!!」
「ぱぱ、だいじょうぶなの・・・?」
「大丈夫よ、休んどけば治るから、病院に行って薬貰って来たから。さあ、帰ろうか。」
「うん!!」
「所で何か、良いことがあったの?」
「うん、てじなさんがきたの、おもしろかったよ~。」
「そう、よかったね。」
娘と、妻が手を歩き出す。
女がじっと立ち尽くして、見つめながら・・・。
第6話 八嶋美雪
「ふんふんふ~ん♪」
少女は、制服姿で学生用の鞄を肩にかける、ストラップにはいくつもちゃらちゃらと付けている。るんるん気分で街中を歩く。革靴のコツコツを鳴らしながら、金髪で肩にかかるくらいのミディアムヘアーで前髪がかかり、いわゆるギャル風の女子だった。ピンクのマフラーを後ろでリボン結びをしている。
少女は、ぶるりと振るえて肩を抱きしめながら叫ぶ。
「あ~寒い!!・・・っと、此処かな。」
少女が辿り着いたのは、保育園だった。
少女は、にやりと笑いながら呟く。
「見つけた、田中麻衣。」
※※※※※
「田中。」
「何?」
「お前、最近、寝てるのか?隈が酷いぞ。」
「そんなに酷いか?」
「おう、もう今日は早退しろ。ふらふらだろお前、帰って休んで来い。俺から上司に言っておくから。」
「ありがとな長島。」
「借りは返したぞ。」
「はいはい。」
長島が、田中ににやりと笑い、背中をぽんと置く。田中はゆっくりと身支度を整え、家へと戻るのだった。
※※※※※
ロビーの中に歩いている田中だったが、途中、女に会った。
「田中さん、大丈夫ですか?顔色が悪いですけど・・・・・・。」
「大丈夫ですから。」
「でも・・・。」
「大丈夫だって言ってるだろ!?」
女が驚いて、田中を怯えた目で見つめる。田中は、はっとして女に話しかけるが、女が先に話す。
「す、すいません私・・・・・・。」
「良いですよ、俺が悪かったんで、ちょっと調子悪くて、失礼します。」
田中は、足早に去る。八嶋はただ、田中の後ろ姿を見つめていた。
田中は、昨日といい、八嶋の言動が頭のなかでぐるぐるとまわり、焦りと苛立ちが増していた。
「くそっ。」
※※※※※
「此処に、コインがあります。そしたら、このコインがある生き物に変わります。それは、なんでしょう~か?」
「うさぎ!!」
「ねこ~。」
「カエル!!」
「残念、正解は~これでした。」
少女の手には、白い鳩が現れ、鳩は少女の肩に止まる。その合図で、歓声が鳴る。
「わぁ、おねえちゃんすごい!!」
「すげー!!」
「どうやってしてるの!?」
「まだまだこれからだよ~♪」
少女は、次々とマジックを披露する。子供達には、違う世界に入り込んだように、目を輝かせる。
「わあ、サーカスみてるみたい。」
「すごい、すごいー!!」
やがて、終了の合図で、拍手の歓声が鳴り響く。
※※※※※
少女はマジックショーを終え、片付けを始める。
「おねえちゃん、すごいね、あれどうやってしているの?」
「ムフフフ~実はね~♪」
「うんうん。」
「内緒なの~教えな~い♡」
「え~なにそれ、おしえてよ~!!」
「あらあら、麻衣ちゃん、美雪ちゃんともう仲良くなったの?」
保育士さんが声をかける。
「へ~麻衣ちゃんって云うんだ、私、美雪っていうの、よろしこ。」
「たなかまいです。よろしくね~♪」
麻衣と、美雪は、握手を交わす。
「よろしく~。」
「まいちゃんは、迎えが遅いね~。パパとママはどうしたの?」
「おかあさん、おとうさんしごとがあるから、いつもおそいの。いっしょうけんめいしごとしているから、だから、まい、がまんしてる。」
「ふ~ん、麻衣ちゃんは、偉いんだね~。」
「うん、まいはえらいの!!」
「じゃあ、麻衣ちゃんにこれをあげるよ。」
「なに?」
少女が手渡したのは、赤い飴玉だった。
「これで我慢してね。」
パチリと、ウインクを決める。麻衣は、嬉しそうに少女を見上げ言う。
「わぁ、おねえちゃん、ありがとう!!」
「ごめんなさいね、美雪ちゃん。また何時でもいらっしゃいね。」
「良いんですよ、んじゃ、そろそろ行きますね私。」
「ばいば~い。」
「またね。」
「あ、おねえちゃん!」
「何~?」
「おねえちゃんのうえのなまえなんていうの?」
「八嶋美雪(やしまみゆき)だよ。」
「みゆきおねえちゃんまたね~!!」
「またね~ん♪」
ひらひらと手を交わし合うと、少女は、歩き出す。るんるん気分で歩き出す。そして、歌を唄いだす。
「ふんふんふ~ん。あの子が欲しい、相談しましょ、じゃあ、そうしましょ、そうしましょ~♪」
妻が、急いでいる様子を、美雪はちらりとすれ違う。美雪は目を細めながら言う。
「あの子が欲しい・・・♪」
「麻衣、ごめんね遅くなって、パパが熱出しちゃって、看病してたの・・・!!」
「ぱぱ、だいじょうぶなの・・・?」
「大丈夫よ、休んどけば治るから、病院に行って薬貰って来たから。さあ、帰ろうか。」
「うん!!」
「所で何か、良いことがあったの?」
「うん、てじなさんがきたの、おもしろかったよ~。」
「そう、よかったね。」
娘と、妻が手を歩き出す。
女がじっと立ち尽くして、見つめながら・・・。
第6話 八嶋美雪
「ふんふんふ~ん♪」
少女は、制服姿で学生用の鞄を肩にかける、ストラップにはいくつもちゃらちゃらと付けている。るんるん気分で街中を歩く。革靴のコツコツを鳴らしながら、金髪で肩にかかるくらいのミディアムヘアーで前髪がかかり、いわゆるギャル風の女子だった。ピンクのマフラーを後ろでリボン結びをしている。
少女は、ぶるりと振るえて肩を抱きしめながら叫ぶ。
「あ~寒い!!・・・っと、此処かな。」
少女が辿り着いたのは、保育園だった。
少女は、にやりと笑いながら呟く。
「見つけた、田中麻衣。」
※※※※※
「田中。」
「何?」
「お前、最近、寝てるのか?隈が酷いぞ。」
「そんなに酷いか?」
「おう、もう今日は早退しろ。ふらふらだろお前、帰って休んで来い。俺から上司に言っておくから。」
「ありがとな長島。」
「借りは返したぞ。」
「はいはい。」
長島が、田中ににやりと笑い、背中をぽんと置く。田中はゆっくりと身支度を整え、家へと戻るのだった。
※※※※※
ロビーの中に歩いている田中だったが、途中、女に会った。
「田中さん、大丈夫ですか?顔色が悪いですけど・・・・・・。」
「大丈夫ですから。」
「でも・・・。」
「大丈夫だって言ってるだろ!?」
女が驚いて、田中を怯えた目で見つめる。田中は、はっとして女に話しかけるが、女が先に話す。
「す、すいません私・・・・・・。」
「良いですよ、俺が悪かったんで、ちょっと調子悪くて、失礼します。」
田中は、足早に去る。八嶋はただ、田中の後ろ姿を見つめていた。
田中は、昨日といい、八嶋の言動が頭のなかでぐるぐるとまわり、焦りと苛立ちが増していた。
「くそっ。」
※※※※※
「此処に、コインがあります。そしたら、このコインがある生き物に変わります。それは、なんでしょう~か?」
「うさぎ!!」
「ねこ~。」
「カエル!!」
「残念、正解は~これでした。」
少女の手には、白い鳩が現れ、鳩は少女の肩に止まる。その合図で、歓声が鳴る。
「わぁ、おねえちゃんすごい!!」
「すげー!!」
「どうやってしてるの!?」
「まだまだこれからだよ~♪」
少女は、次々とマジックを披露する。子供達には、違う世界に入り込んだように、目を輝かせる。
「わあ、サーカスみてるみたい。」
「すごい、すごいー!!」
やがて、終了の合図で、拍手の歓声が鳴り響く。
※※※※※
少女はマジックショーを終え、片付けを始める。
「おねえちゃん、すごいね、あれどうやってしているの?」
「ムフフフ~実はね~♪」
「うんうん。」
「内緒なの~教えな~い♡」
「え~なにそれ、おしえてよ~!!」
「あらあら、麻衣ちゃん、美雪ちゃんともう仲良くなったの?」
保育士さんが声をかける。
「へ~麻衣ちゃんって云うんだ、私、美雪っていうの、よろしこ。」
「たなかまいです。よろしくね~♪」
麻衣と、美雪は、握手を交わす。
「よろしく~。」
「まいちゃんは、迎えが遅いね~。パパとママはどうしたの?」
「おかあさん、おとうさんしごとがあるから、いつもおそいの。いっしょうけんめいしごとしているから、だから、まい、がまんしてる。」
「ふ~ん、麻衣ちゃんは、偉いんだね~。」
「うん、まいはえらいの!!」
「じゃあ、麻衣ちゃんにこれをあげるよ。」
「なに?」
少女が手渡したのは、赤い飴玉だった。
「これで我慢してね。」
パチリと、ウインクを決める。麻衣は、嬉しそうに少女を見上げ言う。
「わぁ、おねえちゃん、ありがとう!!」
「ごめんなさいね、美雪ちゃん。また何時でもいらっしゃいね。」
「良いんですよ、んじゃ、そろそろ行きますね私。」
「ばいば~い。」
「またね。」
「あ、おねえちゃん!」
「何~?」
「おねえちゃんのうえのなまえなんていうの?」
「八嶋美雪(やしまみゆき)だよ。」
「みゆきおねえちゃんまたね~!!」
「またね~ん♪」
ひらひらと手を交わし合うと、少女は、歩き出す。るんるん気分で歩き出す。そして、歌を唄いだす。
「ふんふんふ~ん。あの子が欲しい、相談しましょ、じゃあ、そうしましょ、そうしましょ~♪」
妻が、急いでいる様子を、美雪はちらりとすれ違う。美雪は目を細めながら言う。
「あの子が欲しい・・・♪」
「麻衣、ごめんね遅くなって、パパが熱出しちゃって、看病してたの・・・!!」
「ぱぱ、だいじょうぶなの・・・?」
「大丈夫よ、休んどけば治るから、病院に行って薬貰って来たから。さあ、帰ろうか。」
「うん!!」
「所で何か、良いことがあったの?」
「うん、てじなさんがきたの、おもしろかったよ~。」
「そう、よかったね。」
娘と、妻が手を歩き出す。
女がじっと立ち尽くして、見つめながら・・・。
第7話 猫の死骸
それは、娘を迎えに行く前の話である。
「貴方、本当に大丈夫?」
「ごめん、もう大丈夫だから。」
ゴホゴホと、咳をする田中に、妻は、心配そうに語りかける。妻は、ゆっくりと話す。
「念のために熱、計ってみましょうか。」
「ああ・・・・・・。」
妻が体温計を手に、田中の右脇にはめる、熱を計る、音が鳴り、妻が外して見てみると36.8℃と熱が下がっていた。妻が、ほっとして田中に、話す。
「熱が下がって良かったわね。」
「ああ、ちょっと身体がだるいだけだから、心理かけたな・・・。」
「良いわよ別に、あ、私、麻衣の迎えに行ってくるわね。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
妻が、時間を見て、麻衣の迎えに向かった。田中は、はあ~と溜め息を零す。
祖母は、外出している為に、一人の空間は久しぶりであった。
「なんか・・・久しぶりだな、こういうの・・・。」
田中は、目を閉じて、そして、夢の中に旅立つ。
夢の中で、田中は立ち尽くしていた。
三つ編みの少女は、ノートを見つめて怒りを露わにして、右足で何度も踏みつける。何度も何度も。そして、田中の方を睨みつけて呟く。
そして、指を指しながら田中に言う。
「お前を見つけ出して殺してやる・・・!!」
「!?」
田中は飛び起きて、ぜえぜえと息を乱す。
「はあ、はあ・・・。」
何なんだ一体、あの少女は、俺に、殺すと言った。悪夢とは、何て恐ろしいのだろう。田中は、生きた心地がしなかった。
「俺は、何をしたんだ・・・?思いだそうとするけど、思い出せないんだよ・・・!?」
田中は、中学の頃の記憶を失くしていたのだから。
※※※※※
「麻衣、なんか嬉しいことがあったの?」
「うん、きょうはね、てじなのおねえちゃんがきたの。」
「お姉ちゃん?」
「やしまおねえちゃんのいもうとっていってた。」
「妹・・・・・・?」
そんな、偶然があるのかと妻が疑問に思った。
「とりさんがとんだり、てからコインがでてくるのすごかったよ~!!」
興奮しながら言う麻衣に、妻は、曖昧に答える。
「そう、良かったわね麻衣。」
「うん。」
「あとね、ママ。」
「うん?」
「みゆきおねえちゃんがいってたの。ねずみのおにんぎょうさんがにひきなくしたって、やしまおねえちゃんがさがしてるんだって。」
ねずみのおにんぎょうさん?
「鼠のお人形さんって、そのお姉ちゃんが言ってたの?」
「うん。」
「・・・・・・一体、何のことかしら。」
「わからない、でもおねえちゃんがいってた。」
妻と娘が手を繋ぎながら歩く。
「ママ、きょうのごはんなに~?」
「今日は、シチューだよ。」
「シチュー、わあ、おいしそう!!」
「おばあちゃんは、今日はいないから、ママと寝ようね。」
「うん!!」
娘が、妻と手を繋いで、ぶんぶん大きく揺らしていたその時、突然、娘が立ち止まり、後ろを振り返る。
「・・・・・・。」
「麻衣、どうしたの?」
「あしおとがまたするの。」
「え?」
妻が後ろを振り返るが、誰もいない。
「何も、いないじゃない。」
「いるよ。」
娘は、無表情に妻を見つめて呟く。妻は、娘の異様な雰囲気に、ぞっとした。
だが、その時ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーカツンーーーーーーーーーーー
ーーーーカツンーーーーーーーーーー
「え?」
ーーーーカツンーーーーーーーーーー
ーーーーカツンーーーーーーーーーー
「あ、またいってる。」
「麻衣、パパが言ってたのって、この足音?」
「うん。ママにもきこえるんだ。」
きゃっきゃと麻衣が嬉しそうに呟く。それに続き、足音が近づいて来る。足音の音が徐々に速くなる。
ーーーーカツンーーーーーーーーーーー
ーーーーカツンーーーーーーーーーー
ーーーーカツンーーーーーーーーーー
カツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツンカツン
「麻衣!!」
「え、わ!!」
妻は、娘を抱え家まで急いで走る。
足音は追いかける。カツンカツンと、靴音を響かせながら、妻が走りながら後ろを振り返るが、誰もいない。妻は、早く家に着きたくて、足を早める。
やがて、家に着くと、足音が突如止んだ。妻は息を整える。
「・・・麻衣、下ろすわよ。」
「うん。」
妻は娘を下して、辺りを見渡す。辺りは、真っ暗で何も見えなかった。娘も、後ろを振り返って、妻に話す。
「おとがやんだね。」
「麻衣、あれは、何だったの?」
息継ぎをしながら、娘に問いかける。娘は、淡々と言う。
『おねえちゃん。』
「おねえちゃんって、誰なの麻衣、言いなさい。」
「おねえちゃんは、おねえちゃんだよ。」
正体を言わない麻衣に、妻は、これじゃあ埒が明かないと溜息を零し、玄関の鍵を開けようとしたその時、
「ママ、なにかにおうよ。」
「え?」
娘の発言に、妻も臭いを嗅いでみる。
「う!?」
異臭の臭いに手を鼻と口を押えて妻は顔を歪める。
「麻衣、先に中に入ってなさい。」
「わかった。」
娘は、言われた通りに、中に入る。妻は、臭いのする方へ、向かってみる。
臭いは、ベランダの方で、近づけば近づくほど、異臭の臭いが増す。吐き気がして来るが、妻は、段々と近づく。すると草陰に、茶色い紙袋が置かれていた。
「袋・・・?何かしら・・・。」
妻が中を覗いてみると、
「な、何よこれ!?」
腐敗した猫の死骸が置かれていた。蠅がたかり、見るも無残な姿になっていた。
※※※※※
「成程、ベランダの所から、腐敗した猫が見つかったと。これは、ご近所さんが買っていた猫と似ています。」
「一体、何で私達のベランダの所に・・・。」
「詳しいことは、分かりませんが、悪質な嫌がらせですね。一応、この猫の検査をしてみます。」
「すいません・・・。」
「他に変わったことは?」
「後は大丈夫です。」
妻は、警察に通報して、猫の死骸を話した。警察の話では、近所の猫が二週間前からいなくなって捜索届が出ていたとのことであった。
「三毛猫のミケちゃん、メス。確かに似ています。一応、死骸は、お預かり致します。」
「お願いします。」
警官が去った後、妻が、鍵をかけ、リビングへと戻る。喉が渇いたので、水を飲みに行った時、田中に会う。
「貴方、もう大丈夫なの?」
「ちょっと寝付けなくて、もう大丈夫だよ。それより、何で警官が玄関にいたんだどうしたんだよ。」
「・・・ベランダに猫の死骸があったの、しかも、近所の猫の。」
「どうして家に?」
「分からないわ、でも、私ね、貴方と同じ体験をしたのよ。」
「!?」
「足音よ。ツカツカ追いかけて来るのよ。私、本当に怖くて堪らなかったのよ!?ひょっとして、あの子何かにとり憑かれているんじゃ・・・。」
「おばあちゃんに聞いてみるか?」
「そうね、私も、今日のこととか、前に起こったこと言おうとしたけど、言えなかった、言える筈がないですもの!!」
顔を覆い、錯乱しだす、妻に、田中は、只抱きしめてあやすことした出来なかった。
第8話 記者 服部佑真
【昨夜、東京都内公園の湖に一人の女性の死体が発見されました。女性の名前は、荻窪春枝さん34才女性、遺体は、全身打撲跡、手足には、縛られていた跡も見られ、他殺の可能性があるとのことです。今後、捜査を続ける模様です。】
ラジオのニュースで、流れる雑音に、記者、服部佑真は、ある資料を見て呟く。
「これで3人目か・・・・・・。あの人に聞くしかないな。」
写真を見つめて呟く、写真の中には、田中が写っていた。
※※※※※
警察署関内の会議室で、ニュースを佐藤警部と、部下、笹川は、今日報道されているのを二人で観ていた。
「これで3人目っすね。犯人って、単独の可能性すかね。」
「単独であり、他殺の可能性もある。見ろ、この事件、あちこちの打撲跡があるだろ、これは、どこかで監禁され、暴行していたということだろう。」
「犯人はわざわざ一目がある所を遺体を遺棄して、人に見つけやすい所に晒した。何故だと思う?」
「何でですかね?」
「【私を見つけて欲しい。】」
「私を見つけて欲しい?わざと遺体をそこに置いて何の得があるんすか?」
「犯人の視点で考えてみろ。わざわざ首や全身打撲跡、やり方は同じ犯行だ。殺され方は異なる。だが、傷はどうだ?一番酷い場所はどこだ?」
「首?」
「そうだ、首だよ。犯人にも、その場所が、同じ様にくっきりと跡が残っているんだ。自分が暴行された場所を他人にも痛みを与える様に。」
「DNA鑑定でも犯人の返り血だけだったって、犯人は、相当のやり手っすよね。」
「犯人は、無邪気な子供だ。シリアルキラーだよ。残虐で冷酷、まるで道化師、奴は、完全犯罪を完璧にしやげているぞ。その、証拠に・・・。」
佐藤警部が、ビニール袋に入っている物を、笹川に見せながら、言う。
「縄が側にある。血で汚れた縄、血で濡れていない縄、どれも犯行に使ってあった物だ。」
「その、使った跡って指紋が綺麗に残っていないっスよね~。何なんスか、指紋が残っていないってまるで幽霊みたいっすね。」
「幽霊か、本当だな・・・。」
「まだまだ謎っすよねこの事件。」
「奴は、道化師だよ。」
縄を睨みつけながら、佐藤警部が呟く。
※※※※※
熱で会社を三日間休んだ田中は、八嶋に会う機会はなく、仕事を終えた後、帰宅している途中に、一人の記者と会う。
「あ、すいません~!!」
「はい?」
「田中修也さんですね。私、こういう者なのですが・・・・・・。」
名刺を渡され、田中は呟く。
「東京スクープ記者?。」
「ええ、服部と申します。実は、私、ある事件が気になりまして、田中さんに、お聞きしたいことがありまして。」
「・・・何でしょうか?」
「1992年の12月5日の少女首つり自殺事件。」
「!?」
「田中さんは、確か~、あの学校の卒業生で、その少女と親しかったとか、そして、その少女は自殺した。」
「・・・・・・。」
「此処じゃなんだし、詳しいことは、あの喫茶店でお話しませんか?」
服部が指を指すと、近くの喫茶店だった。
「分かりました・・・。」
田中は、渋々着いて行くことになった。
「それで、さっきの続きなんですが、何か知っていることはありますか?私、それが知りたくて。」
「私は、本当に、中学の時の記憶がないんです。」
「あれだけ、悲惨な事件なのに?感の良い警官は気づいてますよ。」
「・・・何を言ってるんですか?」
「はぁ~、記憶がないのは本当の様ですね。」
「私は、その事件があった直後に、交通事故にあったんです。」
「交通事故?」
「私は、車の衝撃で、頭を強打して、中学の記憶はまったくないんです。思い出そうとするんですけど、頭が真っ白で何も思い出せない、頭が凄く痛くなるんです。」
「・・・そのようですね、なら、これならどうですか、その少女は死んだけど、まだ、生きているとは考えつかないですか?あの少女は、貴方が親しかったグループにいじめられていた話を。」
「だから私は!!」
「あくまでも私の推測ですがね。」
田中は、声を荒げ、服部に言う。だが、服部の思わぬ返答に、田中は、呆然とする。
「・・・・・・。」
「貴方の親しかったグループは、貴方を含めて7人、そのうちの3人は、首を絞められて痣が残っている。傍らには、ロープが置かれている。」
「貴方、一体何者なんですか?」
「私は、只の記者です。」
「言ってることが滅茶苦茶だ。」
「スクープを書くってのは、一番のネタを手に入らないと気が済まないんですよ。・・・あれ、もう、時間か、それではまた、何か用でしたら名刺に連絡して下さい。」
そう言いながら、服部は、2人分のコーヒー代の金を払い出て行った。田中は、思った。
あの記者は、何か探っていることをーーーーーーーーーーーーーー
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