第1話  八嶋佐恵子

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そんな出来事があったのも束の間、既に、夕方の六時をまわっていた。そして、長島が田中に焦った様に言う。 「田中、書類任せていい?八嶋さんに、書類渡すだけで良いんだ。」 「どうしたんだ?」 「今日用事があってさ、頼む!!」 「分かった分かったやるから、ほら、行った行った。」  「恩にきる!!」  長島は、田中にお礼を言い、急いで去って行った。田中は、渋々女の元に向かうことにした。机にただ、書類を置くだけなので、置いたらさっさと帰るつもりだった。 「あれ、明かりが付いてる。」 隣の部署なので誰もいないと思ったら、暗闇のなかに、一つだけ明かりがぽつんと光っている。ゆっくり近づいてみると、そこに女がいた。女はパソコンに向かって作業をしていた。田中は女に声をかけた。 「八嶋さん。」 「!?」 女がびくりと肩を揺らす。女は、驚いて後ろを振り向き、田中を見やる。 「えっと・・・。」 「あ、すいません作業中に、今日会ったばかりでしたよね?俺は、隣の部署の田中修也と申します。長島さんから、書類を八嶋さんに渡すよう言われたので持って来ました。はい、これ。」 田中は女に、書類を渡す。  「八嶋さん。」 「はい。」     
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