1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
そんな出来事があったのも束の間、既に、夕方の六時をまわっていた。そして、長島が田中に焦った様に言う。
「田中、書類任せていい?八嶋さんに、書類渡すだけで良いんだ。」
「どうしたんだ?」
「今日用事があってさ、頼む!!」
「分かった分かったやるから、ほら、行った行った。」
「恩にきる!!」
長島は、田中にお礼を言い、急いで去って行った。田中は、渋々女の元に向かうことにした。机にただ、書類を置くだけなので、置いたらさっさと帰るつもりだった。
「あれ、明かりが付いてる。」
隣の部署なので誰もいないと思ったら、暗闇のなかに、一つだけ明かりがぽつんと光っている。ゆっくり近づいてみると、そこに女がいた。女はパソコンに向かって作業をしていた。田中は女に声をかけた。
「八嶋さん。」
「!?」
女がびくりと肩を揺らす。女は、驚いて後ろを振り向き、田中を見やる。
「えっと・・・。」
「あ、すいません作業中に、今日会ったばかりでしたよね?俺は、隣の部署の田中修也と申します。長島さんから、書類を八嶋さんに渡すよう言われたので持って来ました。はい、これ。」
田中は女に、書類を渡す。
「八嶋さん。」
「はい。」
最初のコメントを投稿しよう!