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【ピンポーン】
「あら、こんな時間に誰かしら?」
妻が、玄関まで出向くと、そこに、噂をしていた女が立っていた。
「すいません、今日、引っ越してきた八嶋佐恵子と言います。」
田中は、何故此処にあの女がいるのか驚いた。女は、私服姿で白いワンピースを着ていた。女が控えめに笑い、田中に言う。
「あ、田中さん、こんにちは。またお会いしましたね。」
【また】だと?偶然にしてはあまりにもでき過ぎてはしないかと田中は疑心暗鬼に襲われる。今日初めて会った人間に、普通、会いに行くのか、どうやってこの場所を知ったのか気になった。田中はそんな考えを余所に、女に言う。
「や、八嶋さん、さっきぶりですね。」
「あら、知り合いなの?」
「田中さんとは同じ仕事先が同じで今日、私が会ったばかりなんですよ。」
「まあ、仕事先が同じだったんですか?ああそれで2人知ってたんですね。」
妻が女と意気投合しながらも田中は、腑に落ちない様子であった。だが、どこだか歯車が回り始めていると確信した。
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