第1章 はじまりの朝

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いざ入った門の向こうは道の先が見えない程広く沢山のお店が並んでいた。 お店は木造か煉瓦造りが多くどれも個性的な店構えをしていてそれぞれ何のお店だか分かるようなデザインになっている。 道路は全て白い煉瓦で整備されていて各所に規則正しく押花や宝石が埋め込まれていてとても綺麗だ。 見る景色見る景色、何もかもが輝いて見える! 「うわぁ~!」 あまりの感動にそんな言葉しか出ない。 するととてもいい匂いがしてきたのでその先を見るとそこには赤い外観をして屋根には目玉の飛び出しそうな顔をしたチクタクドリ型のパイの模型が飾られたパイ屋さんがあった。 その下の看板には「パイ屋 タクトリー」と書かれている。このパイ屋さんの名物であるチクタク鳥を使ったタクトリーパイはとてもジューシーで美味しい。動物の腸で出来た薄皮の球体の中に肉汁と挽き肉がたっぷり入っていてそれがパイの中にたくさん詰め込まれている。その玉を頬張った瞬間にパリッと弾けて肉汁が口の中全体に広がる瞬間がとてもクセになる。僕の大好物の1つだ。 それを見て僕はおばあちゃんの方を振り返り、 「おばあちゃん!あそこにタクトリーパイが売ってるよ!隣には見た事ないお菓子も!!向かいには難しそうなパズルも!!!おばあちゃん、!!!!」 と矢継ぎ早に叫んだ。 しかしおばあちゃんはとてものんびりした口調で 「まあまあ、少し落ち着きなさいな。まず必要なものを買ってから。それから欲しいものを見ましょうね」 と。 白い大きなお団子頭をてっぺんでまとめ目尻の下がった優しい笑顔で言われるとこちらもつい顔も気も緩んでしまう。 瞬時に落ち着きを取り戻した僕は何を買うのか見ようとさっきの手紙をもう一度見た。
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