なみだ

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 潮の匂いが少しだけする駅のホームで、僕はいつもの通り一時間に一本しか来ない電車を待っていた。田舎のローカル電車だ、殆ど乗客はいない。このホームには僕も含め二、三人の学生がいるだけだ。寒さにかじかむ指先で本のページをめくりながら電車を待っていた僕の傍を、いつもと違う香りが通り過ぎて行った。悪い気はしなかった。長い黒髪を靡かせたその少女。まるで儚く消えてしまいそうな美少女は、僕の目の前で線路へと足を滑らせて視界から消えた。
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