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空が黒い影を落とし雫をとめどなく降らせるある夜、傘を差す外見のよい出で立ちの男がいた。
見た目はそこそこ若く、端正な顔つきは女がこぞって群がるようだ。そして、緩くウェーブのかかった髪と彼の纏うスーツがまた映えている。
男はとある店から帰るところみたいだ。傘を差し、帰ろうとしたときふとある暗がりをみた。
そこにはかすかだが人影がある。男は少し気になりそのほうに近づいた。
そこに居たのは薄汚れたスーツ姿で傘もささずにずぶ濡れた姿の男だった。
髪は黒髪の短髪で彫りの深いワイルド枠に入るようなやつだ。
その男の口横は誰かに殴られたのか切れている。そして男は生気を奪われたかのようにしゃがみこみ項垂れていた。
彼は薄汚れた男に傘をかざし声をかける。
「どうしたの?」
男は一瞬だが上をちらと見上げる。
「大丈夫?その怪我誰にやられたの?」
男はしゃがみこみ顔をのぞき込んだ。
(酒臭いな)
男からは強く酒の臭いがした。相当飲んでいるのだろう。
「ほら、立てる?私の家で治療しよう」
すると男はぐいと彼の腕を引き顔をよせた。
「俺を拾ってくれるの?」
そして離れてニカッと笑った。
「はははっ、面白い顔ーー」
なにか勘違いをしているのか能天気に男は笑う。
そんな男に彼は興味を持った。
「うん、私がひろってあげる」
そう微笑み男を自分の家にあげるのだった。
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