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薫がキッチンへと降りるともう食卓には朝食が出来上がっていた。
「そっち座って」
そう男は薫に向かいの席を進めた。
薫が座るのと同時に男も座り、食事を始めた。
「あの。。。」
「ん?なに?」
薫の言葉に男が呼応する。
「すみません、あの、、いろいろとして頂いて、その。。さっき話していたこと、なかったことにとか、出来ませんか?」
恐る恐るだが、意を決して質問してみる。
男はじっと薫を見つめ、自身の持っていたナイフとフォークを置いた。
「それはむり。僕はもう君と一緒になるって決めたから。何がなんでも僕は君を手放さない。」
スっと薫を射抜く目をして男は告げた。
薫はビクッとして俯いてしまった。
「ねぇ、それよりも薫はなんであそこでずぶ濡れになってたの?」
「そ、、それは、、、、」
「なにかあったの?」
「ちょっと、、、それは、言えない」
ガタッと音を立て男は乗り出して薫の髪を掴んで持ち上げた。
「これから一緒に暮らすのに隠し事?僕は聞いてもいいよね?」
薫は男の変貌に恐怖し声絶え絶えに答えた。
「ふっ。。。うっぐ。。か、会社、、、、首になって、、居場所無くして、それで」
「ふうん、そうだったんだ、じゃあちょうどいいじゃん」
と言い手を離して男は座り直した。
「これからよろしくね、薫。あと、僕のことは呼び捨てでいいよ、敬語も外して」と笑顔で話す。
「な、、名前。。」
「あ、まさかそれも忘れてる?僕の名前は渡辺真琴、まことって呼んでね」
「う、うん。。」
こうして2人の奇妙な同居生活は始まった。
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