双剣の将

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(ここは変わらない....。) 重く暗く硬い黒き門を、見詰めながらシオンは時を飛び、幾度も見てきた重々しい門を見据えた。 黒き門ーー。 【唯一たる者】復活の地。 かつて、シオンはここでリュートや、その仲間達と共に【唯一たる者】ーー。 いや、その主となりし者、ルヴァルト・レインズと対決した場所。 シオンは過去の切なき思いを噛み締めながら、黒き門に手を当てる。 その直後、シオンの波動を感知し、黒き門は幻の如きモノのように消えた。 その後、シオンの視界内に広大なる敷地と無数の木々が飛び込んでくる。 しかし、その光景はこの四年間、未来視と時空転移により幾度となく見てきた光景。 それは運命の改変の為に、幾度となく飛んだ未来の光景だったーー。 運命の原理により過去には遡れないが故に、幾度となく繰り返し見てきた未来。 だが、シオンが見てきた未来の光景は、風景ただ一つのみではない。 風景以外にもう一つーー。 「何時まで様子見をしている気ですか、アルミスさん?」 シオンは自身の右後方の木々に向けて、そう問い掛けた。 その直後、シオンに対し飄々とした軽い口調の言葉が返ってくる。 「いやいや、参ったーー。 間違いなく、気配は消していたんだけどね? 彼が言う客人が、誰か気になってね....気分を害したならすまない....って、あれ? 何で俺の名前を知っているんだ??」 アルミスは首を傾げながら、木の上から飛び降りる。 そして数秒後、今や双剣の将と恐れられるアルミス・ブラウドは、シオンの顔をマジマジと見ながら驚きの表情を浮かべた。 「あれ、何か見覚えが....? あっーー君は、もしかしてシオン??」 「お久し振りです、アルミスさん。」 「おー、本当に久し振りだね!? 元気そうで何よりだよ!」 「アルミスさんこそ、元気そうで。」 「元気元気ーーうん? あぁ、そうか成る程なーー。 最初から俺が居た事が分かっていたのか....。 なら、気配を隠そうが無意味だよなーー?」 アルミスは一人納得しながら、シオンにそう告げる。 シオンは苦笑しつつ「そうですね。」と答えを返した。 ーーーーーー ーー五年前 ーー アルミス・ブラウドがシオン達と出会う前、彼は暗殺を生業とする生き方をしていた。 水を操る双剣の想具【ソウグ】の使い手として。
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