双剣の将

6/11
前へ
/37ページ
次へ
しかしーー。 アルミスの予想外の行動に驚き、四人のバルネロは思わず手を止める。 「なっ・・・・・一体何をーー!? 貴様、血迷ったか!??」 バルネロが驚愕するのも無理はなかった。 自らの剣で、自身の両手首を切り裂くアルミス。 その行いは、出血死を招く自殺行為に他ならない。 だが、アルミスは鬼気迫る笑みを浮かべながらバルネロに言い放つ。 「何を驚いているバルネロ? 貴様を殺す為に命を賭けているのだ。 これぐらいの事、驚くに値するまい?」 アルミスはそう言い終えるなり、自身の能力たる雨降りしきる空間を発動させた。 雨降りしきる空間とは、一定範囲に雨雲を生み出し雨を降らせる能力。 本来ならば、その能力は足音を消したり水の槍や壁等を作る為の水を生み出す、補助的な能力であった。 しかし、想具を進化させた現在のアルミスの状況は、大きな異なりをみる。 アルミスの想具は、傷をつけた者の血液を操作するのみならず、自身の血液を混入させた液体と一体化する能力まで保有していたからだ。 それより数秒と経たずして、血液が降り注ぐ雨に入り雑じる。 室内が、うっすらと赤みを帯びた雨水に埋め尽くされるまで数十秒。 しかし、アルミスの行動の意味はその先にこそあった。 室内の足場に水が満ちた直後、足元の水が鋭い鱗を有したる水龍へと変貌する。 「ふん....この期に及んで子供騙しときたかーー。 そんなもので本当に、このバルネロを倒せると思っているのか!?」 バルネロの気迫を込めた怒号が響く。 だが、そう言い放ったバルネロ自身が一番良く理解していた。 眼前の水龍は決して、こけおどしなどではないとーー。 バルネロの言葉が終わると同時、四人のバルネロは水龍に向けて突進する。 圧倒的な危機感を感じつつも、バルネロは水龍に向けて切り込む。 危険なのは百も承知ーー。 だがしかし、バルネロは引くに引けなかった。 その理由は活路が、前進による勝利以外に残されていなかったからである。 勢い良く四人のバルネロが水龍の胴体に向けて、大剣の一撃を放つ。 バルネロは、その一撃に確かな手応えを感じ勝利を確信した。 水龍がこの一撃で、倒しきれるなどとは微塵も思ってはいなかったが、少なくとも再構築するまでの時間は稼げる筈ーー。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加