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それが例え、十秒に満たない時間であろうとも水龍の操作に集中し、無防備に立ち尽くすアルミスを切り伏せるには、十分過ぎる時間だった。
「ふふふ、残念だったなアルミスーー!
貴様の命懸けの技も、どうやら俺を倒すには些か力不足だったみたいだな?」
バルネロは勝ち誇った口調で、アルミスに向けて一気に距離を詰める。
そしてバルネロの読み通り、水龍の再構築には些かの時間を要していた。
バルネロは、完全に無防備状態にあるアルミスへと一斉に斬りかかる。
振り下ろされる大剣。
アルミスには回避する余裕はない。
四人のバルネロは楽しげな笑みを浮かべながら、アルミスの体を数個の肉塊に変えるべく、その刃を容赦なく振り下ろした。
直後、アルミスの肉体は五つに分断される。
(何だ......この手応えの無さは?)
バルネロはアルミスの体を断ち切った時の肉とは異なる異質な感触に、思わず顔をしかめた。
それはまるでゼリーの様な奇妙な感触ーー。
バルネロは今、切り裂いたモノの正体を確認するべく、足元を見下ろす。
だが、切り刻んだ筈のアルミスの死体は影も形も無くなっており、うっすらと赤みを帯びた水面があるのみーー。
バルネロはアルミスの姿を探し、周辺を見渡した。
しかし、次の瞬間、突然、両足に鋭い痛みが走り、バルネロは膝をつく。
(一体何がーー!??)
消えたアルミスと、不可解なる激痛ーー。
そして、その正体が何なのかバルネロは直ぐに理解する。
分体達の肉を貪り食う、水中から現れた無数の水蛇と、水中から姿を現したアルミス。
「くそッ、一体どうなってやがる....?
お前は、さっき俺の手で切り刻んだ筈だぞ!?」
バルネロは驚愕しながら、アルミスの方を見据えた。
「ああ、確かに切り刻まれたなーー。
だが、見ての通り今の俺には通じないぞ。
水と同化した俺にはなーー。」
「水と....同化だと?
ふ、ふざけるな!!」
バルネロは怒りを撒き散らしながら、アルミスに怒号を放つ。
しかし、アルミスはそんなバルネロに静かに告げる。
「最後に言い残したい事はあるか?」
「ふふふ、見事だよアルミス。
まさか、この俺がここまで追い詰めらるとはな....。
そこで提案だが俺と組まないか?」
「・・・・・・・時間稼ぎのつもりか、バルネロ?
貴様に恨みを持つ相手に交渉とは、正気とは思えぬな?」
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