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リュートは見過ごす事が出来なかった。
アルミスの辿る不遇なる運命を。
その理由はただ一つ。
アルミスの辿る数々の苦しみと悲しみが、自らが抱える痛みと重ったからである。
故にリュートは、アルミスを救う為に即座に動いた。
だが、この時のリュートはフェイト・ブレードを手にしてから日が浅く、【未来視】で把握できる範囲も約数ヶ月先の範囲に限られていた。
しかもこの時点で、アルミスの大切な人々はバルネロの手により、既に殺された後ーー。
出来る事には限りがあった。
今のリュートに出来る事はただ一つ、盲目の少女レミルを救う事のみ。
リュートはバルガスには向う予定を取り止め、リュミエラと共に小規模都市ラプランドへと向かった。
リュートとは少女を救うべく、運命改変を試みる。
だが、運命の改変は決して容易いものではなかった。
幾度となく改変し、レミル救出に失敗しアルミスの想具は、破滅への進化を遂げる。
リュートは改変の度に心に響く痛みに耐えながら、魂をすり減らす。
しかし、五度目の改変の時、リュートの強い思いが、フェイト・ブレード絶陽(ゼツヨウ)の新たなる力を引き出した。
そして、アルミスの想具に秘められた新たなる可能性を引き出す。
その可能性とは、水の双剣アクアヴァイトの別方向への進化。
その進化とは水圧の防壁を生み出し大切な者を守る力と、傷や病を治す癒しの水の力である。
その力によりリュート一行は、巨大生物を撃退し盲目の少女レミルを救う事に、成功した。
そして、その後、シオンはリュート達と再開し、アルミスと初めて顔を合わせる事になる。
故にシオンが知るアルミスは、今の飄々とした軽さのあるアルミスであった。
しかし白きフェイト・ブレードをリュートから渡された後、自分が知る人々の辿るべきだった運命と、その人々の悲しき人生を知るに至る。
リュートが辿った運命改変の苦痛と、苦悩の旅....それすらもーー。
ーーーーーー
「そうだ一つ聞きたかった事があるんだけど、いいかな?
どうも、彼には聞きにくくてね。」
「はい、大丈夫ですよ。
私に答えられる事なら。」
アルミスの問いに、シオンは微笑みながら答えた。
「答えれるさ。
いや、彼と君にしか答えられないと言うべきかな....。
もう知っているんだろ、俺が何を聞きたいのかをーー?」
シオンは僅かな沈黙の後、静かに言う。
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