思うが故にーー。

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「リュミエラ、たまには扉から出入りしてくれないか?」 リュートは振り向く事なく、苦笑しつつ後方の暗闇に向けて呼び掛けた。 「気付いておりましたか、陛下?」 黒いローブを身に付けた女性リュミエラは、フードを外し素顔を晒す。 「陛下か....成り行きとはいえ、どうも慣れないね、その呼称はーー?」 リュートはリュミエラの一言に、思わず苦笑する。 「仕方ないですよ。 名実ともに今や貴方は、漆黒の魔王と呼ばれる私達のリーダーなのですから?」 苦笑するリュートに向けて、リュミエラは静かな口調で告げる。 「ははは、不名誉この上ない通り名もあったものだね。」 「えぇ....そうですね。 貴方の今までの行いを考えたら、不名誉この上ないですね。 でも貴方は、そう呼ばれる事を覚悟した上で敢えて、今の道を選択した。 違いますか?」 リュミエラの鋭い一言に、リュートは再び苦笑した。 「返す言葉もないよ、リュミエラ。 それと頼んでおいた待避誘導も完了したようだね?」 「えぇ、滞りなくーーと言いたい所ですが、一部の者は応じてくれませんでした。 知っていたのでしょうが?」 リュミエラの言葉を受けて、リュートは再び苦笑する。 「確かに君の言う通り知ってはいたよ。 それがほぼ必ず発生する状況だからね。 何より彼らは、自分達の信念を元に行動している。 納得しない限り、応じてはくれないのは必然なのかもしれないね、リュミエラ....君も含めて。」 リュートの言葉を受けて、今度はリュミエラが苦笑した。 「見透かされていましたか....。 私も待避命令には応じない事をーー。」 「君も昔から頑固だからね。」 「リュート、その言葉、貴方にだけは言われたくありませんでした。」 「ははは....酷い言われようだな?」 リュートはリュミエラの一言を、笑いながら誤魔化す。 だが、そんな中、リュミエラは不意に真剣な面持ちで、リュートへと問い掛ける。 「所で、これより訪れる来客ですが、世間では白き剣聖と呼ばれています。 そして我々と同じく、この者も【唯一たる者】の欠片に取り付かれた者達を倒し、その欠片を回収しているようです。」 「付け加えるなら昨日、彼女は最後の欠片の回収を終えた。 僕達より先にねーー。」 リュートは、リュミエラへと静かな口調で告げた。 「その通りです。 ですが、それ故に一つの疑問が生じます。」
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