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ヘッドライトが照らす、曲がりくねった九十九折と、まるで鳥居の様に等間隔で奥へと続く赤い反射板の群れ。 静かなロードノイズ。 古くなったワイパーゴムが、キュッ…キュッって不快な音を立てて、車内ではラジオのFM放送がずっと流れていた。 ステアリングホイールを握ったまま、カレがずっと取り留めのない話をしていたけど、A子は正直もうどうでも良かった。 別れ話を切り出す前に、男ってやつはどうして急にソワソワと無口になったり、やたら優しくなったりするんだろう。バレバレじゃんか、ってね。 だから、暗くて危険な峠道を見ながら溜息ばかりついて、上の空で聞いていた。 いっそ車ごと、私もカレも谷底に落ちてしまえ、とやけっぱちでその時は思ったそうよ。 丁度、休憩所のサインが見えてきた辺りで、カレは一旦路肩に車を停め傘を持って外に出た。 自販機で缶コーヒー買って来るわ、って。 この先の駐車場にはへんな車がたむろしてるから、もし誰か来てもウインドーは下ろさずロックも解除するな、駐車場には絶対に来るなとA子に言って。 雨の中脇道を降りていくカレの後ろ姿をみながら、A子はその時ふと、学校で聞いた駒鳥鬼の話を思い出したのね。 雨の中、車が停まっているのは丁度、駒鳥鬼が出るというN峠の駐車場付近だ。 そして時間は深夜12時に近づいていた。
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