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切れかけた古い街灯というスポットライトの下で、降りしきる雨粒の反射する細かな光の煌めきが羽虫のように乱舞する。 どうやら台風が接近しているらしい。 今朝からニュースでは、台風接近に伴い洪水警報が何度も流れていた。 まだ本格的に上陸はしていないものの、今夜はひどい天気だ。 車のフロントガラスに強風が吹き付けると、バラバラと雨音が鳴り視界をいっとき霞ませる。 コンクリートの電柱には、情報提供を呼びかける文面と小学生くらいの女の子の写真が入ったビラが、雨避けのビニール袋に包まれ貼られてあった。 ワイパーは停止してあり、コチコチとハザードランプの音が静かな車内に流れている。 運転席では若い男が、膝の上に乗せていた黒いバインダーを開き何かを確認していた。 まあ相手も、間が持たないだけで見てるフリかも知れないが。 ふと私は助手席から少し伸び上がり、ルームミラーで後ろを覗いた。 すぐ後ろに駐車されたセダンの運転席で50代後半くらいの中年男性が、車内灯を付けたまま煙草を吸っているのが見える。 「……何か気になる事でもありましたか?」 私が凝視していたのに気づいたのだろう、運転席の若い男がバインダーから顔を上げ、私に続いてルームミラーで後ろを確認する。 「ああいえ。ただ……あの方もしかして、最近越して来られたのかしら?」 「あれぇ、お知り合いですか? そうですよ。半年前くらいに、こちらに転属に。 移動が多い仕事なんです、我々は」 「別に、知り合いと言う訳ではないんですが。あ、煙草吸って良いかしら?」 私がVサインを口元に持っていく仕草をすると、運転席の男は歳よりずっと幼く見える笑顔で、ダッシュボード脇の灰皿を引き出してくれる。 シャツの胸ポケットに突っ込んで、半分シケた煙草に火をつけ紫煙を深々と吸い込むと。 「ねえ」 煙を吹きながら、少し躊躇って私が口火を切った。 「あなた駒鳥鬼って話、聞いた事がある?」
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