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強風と豪雨がフロントガラスを洗っている。
遠くで、低い雷鳴の唸りが聞こえた。
車内に居るのに、気圧の高い重い空気が肺を圧迫する気がして、パジャマ代りのパーカーの喉元に触れる。
じきに雷雨になりそうだ。
「今はどうか知らないけど、噂では私が住んでいた学生時代、N峠を車で中程まで進んでいくと、ごく一部【完全犯罪区間】があったらしいのね。
N峠は政令指定都市と、小さな隣町を繋いでいて、峠の半分から東南側が大きな政令指定都市の管区、北西側が隣町の管区になるの。
東南側はいいんだけど、北西側の隣町は畑が続く人口の少ない田舎町でね。小さな駐在所しかない。
人手も足りてなくて……町近くなら駐在所のお巡りさんが車で行って対応するんだけど、峠の真ん中くらいで事故ると、更に反対隣の大きな市か政令指定都市に応援要請を出して、やっと警察が駆けつける。
だから北西の峠真ん中付近は、警察や救急車の到着がいつも遅いの。
しかもその辺りは、携帯電話やスマホから110番通報すると、どうしても基地局が多い政令指定都市の方に繋がっちゃう事が多い。
政令指定都市から隣町、隣町から更に反対隣へ。
又は隣町から政令指定都市へ、応援の為に電話を差し戻し……。
ゴチャゴチャしているから、110番通報した場所によっては、とんでもなく到着が遅れちゃう。
そんな状況だから、N峠では死亡事故が多い。
また警察の目が届きにくく、近くに民家も無い峠道でしょう。
不良やナンパした女の子を連れ込む車が、一時期は駐車場にたむろして問題になった事があった。
ナンパした女の子を、駐車場で車から放り出して置き去りにした事件も過去にあったわ。
怪しい車がウロウロ走り回る駐車場で、その時は奇跡的に峠道まで歩いて、無事に初対面の人の車に乗せて貰えたらしいけど」
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