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「とにかく一時期、峠の駐車場はめちゃくちゃ治安が悪くてね。 くだんの彼女が被害に遭ったのも、丁度そんな時期だった。 彼女は、峠の事を良く知らなかったらしいわ。 たまたま深夜に自分の車で峠道を走っていて、たまたま途中で雨が降り出した。 彼女は疲れていて、そして運の悪い事に休憩所のロードサインを見つけてしまった」 煙草を指で弾いて、私が灰を落とす。 その間も運転席の男は、顔だけフロントガラスに向け、私の話をじっと聞いていた。 「ドアロックして眠っていた彼女が、どうして被害に遭ったのか分からない。 軽自動車のフロントとサイドガラスは全部割られていたから、眠っていた所を引き摺り出されたんでしょうね。 駐車場に出入りする車は大抵ヘッドライトを切ったまま駐車してるから、雨で視界が悪いと何台車が停まっているか分からない事が多いの。 何台かは運転席に人がいるのが見えたとしても、駐車場に車が停まっているのは当たり前。 違法駐車と見分けがつかなかったんでしょうね。 でももっと救われないのは、彼女が一度逃げ出して、警察に助けを求めていたって事」
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