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肺深くまで煙草をゆっくり吸い込み、私が続ける。
「彼女は隙を見て逃げ出し、必死で豪雨の真っ暗な路を走って転落事故防止柵を飛び越え、木立に身を潜めながら息を殺していた。
追いかけて来る懐中電灯の明かりが離れるのを待って、持っていた携帯電話で通報したのよ。
でも案の定、別管区に繋がってしまった。
その光と声で追っ手に気付かれた彼女は、木立の中を何メートルも引き摺られ右足を骨折した。
警察がやっと到着した時には、彼女は駐車場にあった自分の軽自動車のルーフで、既に亡くなっていたそうよ。
土砂降りの雨の中、全裸でね」
「ルーフ?」
「そう。逃げ出せないように。
軽自動車とはいえ、車の天井はそれなりに高さがあるから。抱え上げられたら降りられない。
特に片足を骨折しているなら尚更ね。
そして最初はふざけ半分で数人だったのが、最終的に20人以上がその暴行に参加した。
みんな自分はただの従犯。主犯じゃないってね。
だからその後の取調べでも、名前すら分からない共犯者ばかりで特定は難航。
結局、犯人全員は逮捕出来なかった。
だから彼女の霊は、死んだ今もずっと犯人を探しているの。
異形の鬼の姿でね。
これが、私の知っている【駒鳥鬼】の都市伝説」
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