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吸っていた煙草を灰皿に押し込んで、胸ポケットからもう一本、新しい煙草に火をつける。 丁度一本、灰になった。 雨は激しさを増し、ルームミラーに目をやると駐車した車の中で、中年男が落ち着き無く小太りの体を揺らして腕時計を確認しているのが映る。 運転席の若い男は、黙って苦いものを飲み込んだような顔で前を向いていた。 「この話には続きがあってね。 ……と言っても、こっちは都市伝説そのものの話じゃない。 実は私の友達の一人が、昔、実際にN峠で駒鳥鬼を見たらしいの」
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