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沙耶さんは、榊を見て
『あの人の恋人ね』と、榊を抱き締めた。
『一緒に待つわ。泣かないで』
榊は、沙耶さんの言葉で
両手に顔を埋めた。
沙耶さんの霊視は、朋樹より精度が高いらしい。
視る対象の隣に立って視るような感じだって聞いてた。でも、オレらが考えるより
実際は ずっと高度なことが出来る人だった。
『彼は以前から、よく珈琲を飲みに来ていたわ。
でも私には、彼は視れなかったの。
視れないけど、彼は私に “好きな女がいる” と
言ったことがあるのよ。
あなたを見てすぐに、あなただと わかった。
あなたを通して、彼が見ているものを視るわ』
沙耶さんは、ボティスが榊に
何か残している って言う。
『決まってるわ。
わざわざ言葉にしないといけない?』って笑う
沙耶さんに
『榊は、わかる子じゃないんだけど』って言ったら、沙耶さんは、榊の胸に手を置いた。
『あなたの中にあるものと同じよ。
私は言わないわ。彼が戻ってきたら、直接言ってもらわなくちゃね』
沙耶さんの言葉で、榊は泣く。
ボティスが消えちまってから
オレらの前では、一度も泣いてなかった。
女のひとの声とか言葉って、何か違うんだ。
たぶん。
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