奏でるは天使の吐息

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「あらぁ。テツ君!!久しぶりね!!」 「ご無沙汰してます。百合子(ゆりこ)さん。」 家の鍵をバイト先に忘れてきた俺は、ウチの前で待ち伏せしていた不審者、もとい、幼馴染みの小寺(こでら)爽太(そうた)の家に泊めてもらう事になった。 あの思い出の公園を出てからギリギリ間に合った終電に乗り、駅からソウタの家までは十分ほど。 時計の針はもうすぐてっぺんで重なろうとしていた。 「夜分遅くにお邪魔してすみません。」 玄関で出迎えてくれたのはソウタの母親。 先に電話で連絡してたからか、わざわざ起きて待っていてくれたようだ。 ソウタが引っ越ししたあとも、夏休みとかお互いの家を行き来しては泊まったりしてたけど……高校に上がってからはバイトばっかで、そういや来る事もなくなってたな。 「おっとこ前になっちゃって、まぁ! ソウちゃんもね、テツ君みたいに男らしくなってくれたらいいのに!!」 いや、おばさん。むしろこのままでいいんすよ?俺的には! ──なんていう本音を、危うく声に出してしまいそうになり、かろうじて飲み込んだ。
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