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彼女の愛人に対しての扱いは相当なものでございました。
少しでも欲しい物があると耳に入れば、すぐに最高の物を手配させ、少しでも館の不満を言えば執事がすぐに過ごし易くしてくれるのです。
ミュラー夫人も相当ではありますが、執事のクーパーは有能すぎるほど有能で、すべての部屋から庭の手入れまで広い館の管理を一人で行っており、外に出ればもっと楽な暮らしも出来るはずだろうに文句ひとつ言わず主人に従う変わり者でございました。
そんな場所ですから、用意された服も常に新しくあつらえの良い物ばかり。
宝飾類など一つ売ればどれだけの貧乏人が救われるでしょう。
これだから金持ちは嫌いなのです。
食事も最初だけかと思えば毎度誰かの誕生会かのように最高の物を余るだけ黄金の皿に乗せて、二人では広すぎるテーブルに盛大に並べるのです。
何より可笑しいのは、私の事を「王子様」と呼ぶのです。
初めて恋をした生娘のように莫大な金を湯水の如く貢ぎ続ける彼女は、詐欺師の私が言うのもなんですが、笑いを通り越し、どこか狂気的で薄ら寒いとすら思えました。
しかしまあ、このくらいなら耐えられたでしょう。
ですが少し変わっていると言うには度を越す部分もありました。
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