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あれは成り行き上しょうがなかった。
「河川敷の花火大会みんなでいこーよ」
なんて友人の誘いに
「あ、いいね!」
なんて星宮が言うから。
飯沼の奴が星宮に
「星宮さんの浴衣見たい」
なんて言うから。
「星宮さん色白いし絶対似合いそう」
飯沼なに星宮のこと口説いてんの?
放課後、奴らから離れた自分の席で俺は英語のテキストをぺらぺら捲る。
捲ってはいるけど内容なんて全く入ってこない。
身体の全神経は耳に集中して、意識は全部教室の片隅の会話に持っていかれてる。
「ね?星宮さん」
「あ、あの…」
星宮も星宮。ちゃんと断れよ。
「星宮」
俺は席を立ち上がり名前を呼んだ。
こちらを振り向く星宮にずかずか近付くと、飯沼を押し退けて彼女の前に立った。
「英語のノート貸して」
星宮の大きな眼がぱちぱちと瞬きする。
綺麗だな、なんてぼんやり思った。
「え、俺の貸すよ?」
飯沼が言う。
「いや、いい」
空気読めよ。
俺は星宮から眼を離さず飯沼に答える。
「あ…うん、いいよ全然」
星宮がバッグからノートを取り出して俺に渡した。
「分からないとこあったら聞くから隣座ってて」
「え、あ…はい…」
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