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「……」  正直、そんなに食べられないだろうと思ってた。  けど星宮は予想に反して焼きとうもろこし、焼きそばと平らげていく。  続けて何の躊躇もなくたこ焼きを開ける。  たこ焼きを楊子で切って中からふわっと湯気が上がった時の星宮の無防備な笑顔に、不意討ちでドキッとさせられる。  幸せそうにもぐもぐしている星宮に言う。 「よくそんな帯とか締めてそんだけ食えるね?」 「ぐっ…」  それでも更にたこ焼きを口に押し込むから、むちむちほっぺがりすみたい。  何でそんな可愛いんだよ?  俺のこと何とも思ってないくせにどうしてそんな可愛い仕草で俺を惑わすの?  ねぇほっぺ触ってもいい?  星宮、可愛いよ。好きだよ。  好きだよ…  って言ってしまいたい─ 「でもなんか…そうやって旨そうに食うの、俺結構…  好きだけどな」  ぎりぎりの告白。  でも星宮はそんなこと一ミリも気付かないで、たこ焼きに夢中。 (俺のこと、少しは見てよ…)  たこ焼きに嫉妬する。 (いっそたこ焼きになりたい)  熱いたこ焼きをふーふー吹くピンクの唇に釘付けになる。たこ焼きならその唇に触れられるのに… 「香取くんも食べる?」  星宮の手から楊子を取り上げ、たこ焼きをひとつ差してぱくりと食い付く。  口の中に香ばしいソースの香りが広がる。  今星宮の口の中も同じ味を感じてるわけで。  これってキスと同じじゃない?  なんて思ったら退く?… 「あっつ!」 「切って食べないからだよー」  星宮が笑う。 「でもそういう食べ方、  私好きだよ」 「!!」  なんでそうやって煽るかな? 『好きだよ』 なんて…  好きでもない男に言っちゃダメじゃん。  あり得ないのに期待しちゃうよ? 「…星宮のくせに生意気」 「えっ!何それひどーい!」  俺の呟きを聞き取った星宮が抗議する。  屈託なくころころ変わる表情に堪らなく愛しくなる。 「ふっ」  思わず笑うと、 「うふふっ」  それを見て星宮も笑う。  しょーがねぇな、まぁいいか、この笑顔を一番近くで見られるなら。  俺の好きなところが『たこ焼きの食べ方』だけでも、今夜のところは我慢しといてやる─         *
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