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飯沼から引き離したくて呼んだなんて俺の胸の内も知らず、星宮は素直に俺の隣に座る。
そんなだから余計お前のこと心配になるんだよ…
そのうち星宮の友人が呼んだ。
「瑠璃ー、帰るよー」
聞こえないふりでしっかり星宮のノートを押さえ込む。
「…ごめん、先帰ってて」
「んー。じゃまた明日ね」
奴らが帰ってしまうと辺りは一気に静かになった。
星宮と俺、ふたりきりの教室─
普通こんな時、何て話し掛けるのが正解?
俺はただノートを書き写す。
かつかつとペンが走る音、グラウンドの運動部の声、それに、高鳴る鼓動だけが聞こえる。
(別にノートなんか取らなくてもいいんだけどな)
星宮の視線を感じる。
ノートを人質に拘束して、何やってんだろう、俺。
普通こんな時、告白のチャンスなんだろう。
『星宮が好きなんだ』
言ってしまえたらどんなにいいか─
でも、知ってる。
「星宮、好きな奴いるの?」
「えっ…!?」
星宮の頬が一気に紅潮する。
可愛いな、なんて思うと同時に、これを染めてる奴に嫉妬する。
「あのっ…それはっ!た、多分そんなんじゃなくて!えーと…」
「ぷっ!」
何そのしどろもどろ。可愛過ぎる。
「なぁ、そういうのってさ、恋愛し慣れてない感バレバレ」
「う…」
無垢で清らかで。
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