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夏休みが近付いて、俺は星宮を件の花火大会に誘った。
星宮は馬鹿真面目に
「みんなで行こうよ!こないだそう話してたんだ。
ほら、飯沼くんとかも!ね?」
なんて言ったけど、
「デートの練習。ふたりで行かなきゃデートにならないでしょ?」
と俺はまた星宮をだまくらかした。
それをまたアイツは馬鹿真面目に信じるんだ。
その無垢な瞳に胸が痛む。
いや、痛みながらも安堵した。
(星宮の浴衣、独り占めできる…)
*
青い空、白い雲。
いかにもな夏が視界に飛び込む。
夏休み。
最初の週末に花火大会はあった。
打ち上げ会場近くのコンビニが待ち合わせ場所。
眩しく溢れる午後の陽光の下、行き交う人を眺める。
『星宮さんの浴衣見たい』
星宮、ホントに浴衣着て来るのかな?
浴衣姿でそぞろ歩く女性を見てふと思う。
そう言えば昔、姉が花火大会に浴衣を着て行ってた。
紺地に白っぽい花模様か何かの。
きっと星宮もあんな浴衣を着るんだろう。
『星宮さん色白いし絶対似合いそう』
飯沼はむかつくけどそれは間違いない。
「香取くん!」
「!」
不意に呼ばれて我に返る。
(星宮!?)
やっぱり飯沼と一緒にさせなくて正解だった…
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