15人が本棚に入れています
本棚に追加
暮れなずむ空に星がひとつ。
屋台の並ぶ遊歩道はいつにも増して狭く、人でごった返す。
見回せば周りは言葉を交わし合い、笑い合い、そして手を繋ぎ合う幸せそうな人ばかり。
俺たちと正反対な…?
「きゃ…」
不意に星宮の声がした。
慌てて傍らを振り返ると、流れに逆らう人にぶつかって転びかけた星宮が俺に手を伸ばし、Tシャツの裾を掴んだ。
(あ…)
星宮の手がTシャツ越しに俺の脇腹に触れ、一気に熱を持つ。
「ごめん!」
「いや…」
こんなことでドキドキするとか、変態かよ、俺!
星宮がTシャツを離した後も触れたところに神経が集中するみたいで、胸の高鳴りが収まらない。
本当はもっと、触れていたい…
左後ろを申し訳なさそうに歩く星宮にちらっと眼を遣る。
「……
なぁ、お前さ危なっかしいから、なんなら掴まっといていいけど」
そう言って肘を突き出す。
今の俺の精一杯…
なのに星宮は
「だっ、大丈夫だから!」
と、背中の後ろに手を隠す。
分かってる。
星宮が好きなのは『ソイツ』で、俺に気がないってことは。
でも真っ向拒否られると傷付くんだよ…
「…ふーん」
やり場のなくなった肘を引っ込める。
『ソイツ』の腕なら取るの?
桜色の小指の爪がちらりと覗く。
思わず震える左手を伸ばしかけて、そのまま拳を握った。
触れそうで触れられない距離にいるから余計切なくて苦しいんだ─
*
最初のコメントを投稿しよう!