時を超えて、絆

【いいもの】

高校の入学間近におじいちゃんから電話が来た。
なんでも『いいもの』があるから取りにおいで、だそうだ。
おじいちゃんの家は電車を乗り継いで３０分の距離。特別遠くないので時間を見つけては遊びに行っていた。
でも中学三年のときばかりは、受験に集中したくてほとんど行くことがなかった。

だから久しぶりの訪問。手ぶらなのも悪いと思いおじいちゃん好物のカステラを選んで持っていく。おじいちゃんはお洒落でカステラと一緒に飲むのは８０歳近くなった今でもコーヒー。しかもインスタントは認めず、ちゃんと淹れるんだからびっくり。

「あら、桃香ちゃんじゃない。すっかり大きくなって！」
「こんにちは池上さん。あのちびっこだった私も高校生になります」
おじいちゃんの近所に住む人とはほとんど顔見知り。
なぜならここはお母さんの生まれた町でもあるからだ。