1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
頭の中はもう、追求よりも新たに聞かされた発言でいっぱいだった。
確か、天気予報では今週は通して晴れ。降水確率は連日ほぼゼロとか、そんな予報を聞いた気がする。
なのに雷?
最近の天気は変わりやすいから、急激な天候変化による落雷があってもおかしくはない。でも、落ちるって? 雷が、俺に?
訳が判らないに加えて恐怖が募る。ものもらいじゃ死なないし、ミツバチも、過去に刺されたことがあったらマズいのかもしれないけど、俺に過去体験はなかったから、今回はただ痛いですんだ。
でも雷はそうはいかない。
どう考えてもヤバいだろう危険だろう。だってあんなモン、落ちたら確実に命が終わる。
もう完全に、同僚に詰め寄る気は失せていた。意識にあるのはただ、落雷があるとして、それをどう回避すればいいのかということだけだ。
そんな気持ちで仕事に身が入らず過ごしていた俺の頭上に、二日後、確かに雷は落ちた。命には関わらなかったが、会社員としては致命的な、上司からの激しい激しい雷が。
* * *
あれ以来、その口からトンデモ予報を聞かされるのが怖くて、俺は同僚とはかなり距離のある付き合い方を心がけていた。
寄らず触らず、交わす言葉も最小限。でも元々向うが無口なおかげで、誰もそれを不審には思わない。
一応戻った平穏な暮らし。今、心は実に穏やかだ。もうあんな思いは二度としたくない。
そんなのんきさを覚えていたある日の昼休み、背後からぼそりと声をかけられた。
「明日はキリ」
霧? 朝の天気予報じゃ、確か明日も今日同様、薄雲はあるけど晴れと呼べる一日だと言っていた。なのに明日の天気は霧…じゃなくて!
そういうことじゃない。同僚の口からの予報は全部俺に関わることだ。それもたいていろくでもない形で。
キリ。キリ…キリって何だ? どういう意味だ?
多分聞いても返答は得られないだろう。たから俺は自分一人で悩むしかない。
経験でもう知っている、不吉極まりない予報。
さあ明日、俺はどうなる?
予報士…完
最初のコメントを投稿しよう!