9 2005318

1/1
前へ
/18ページ
次へ

9 2005318

 2005年3月18日 、旧声優陣によるテレビ朝日系列「ドラえもん」が放送終了した。 「大山のぶ代に慣れてるだけあってさ?ちょっとショックだよな?」  新井が言った。  太巻はコタツの中でミカンを剥いていた。 「そうだな?」 「それにしても、まさか真崎が太巻だったとは驚きだよな?」  新井はずっと真田を真崎だと思い込んでた。あの柿本事件はちょうど1年前の話になる。  真田は今日は休診で、実験室にいる。彼の妻である幸子の父、高畑村次郎は真田に興味を持っており、「彼ほどの男はいない」とよく言っていた。  数日前の夜の鍋パーで次郎は真田の友人である太巻、新井、勝田の前で、「君は他人のことには力を注いでるが?部屋は汚いな?」と茶化した。  すると真田が「自分自身を向上させる他人に助けられることはありませんか?」とたずね返してくる。  かくして種はまかれ、真田は実験を始めた。彼は「人間の2つの玉が分裂して違う肉体に宿るなんてすばらしいじゃないか。あらゆる悪行の限りに身をゆだねても、魂は元のままでいられるなんて」と太巻にメールしてきた。  そして、とうとう真田は自らを太巻という恐ろしい悪鬼に変えてしまう薬を作り、服用する。この悪鬼は真田とはかけ離れているため真田の屋敷への出入りを容易にすべく、真田はナースの小西奈美に、太巻が屋敷についての権威と責任を全て取り持つであろう事を伝える。  それから真田は二重生活を始める。太巻は京都で最もみすぼらしいアパートに住むことにする。太巻は木屋町にあるキャバクラで、ハルカという少女を同居目的で家に連れて行き、真田はしばしばヘルスやキャバクラといった、自分の悪しき欲望を満たすところへ通った。真田が元の姿と、元の人格を取り戻すための薬を作っても、太巻へと姿を変える薬を服用するたびに、太巻の悪しき心は強くなっていく。太巻はより醜くなるだけでなく、彼自身邪悪になっていった。  幸子は夫の失踪を心配し、父親である高畑村次郎が様子を見に真田のところへ行く。真田が呼ばれたとき、本人は家にはいなかったが、次郎は道で太巻に出くわし、鉄パイプで殴りつけられる。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加