11ヘルハウンド

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11ヘルハウンド

 イギリスのロンドンにおいて発生した日本人少女誘拐に端を発する犯罪事件を、イギリス大使館へ赴任したばかりの外交官・春山月子の尽力によって解決されたに見えた。   月子は仕事を終えて深夜、十字路にやって来た。大きな犬が残飯を漁っていた。ヘルハウンド(日本では黒妖犬って呼ばれる)!?  目は血みたいな赤い色をしている。地獄の女神、ヘカテーの猟犬とされている。ヘカテーは再生とともに死も司る神だ。さらに新月の夜に現れるとされた。つまり、月のない夜のことだ。周囲は真っ暗で霧がかかっている。  ヘルハウンドは死刑の執行者としての側面もある。 「私が何をしたって言うの!?」  ニューゲート監獄跡地にも現れるって噂だわ。    月日は流れ月子はフランスのコタンタン半島の沖合にあるチャンネル諸島で誘拐された日本人の救出工作を秘密裏に進めていた。だが、作戦は失敗に終わった。    この事件を解決した後、上司である朽葉から次の任務として在ケンブリッジ日本領事館で外務副大臣・赤尾の警護をするよう指示される。日本政府がイギリスの貿易船を攻撃したことによる市民団体のデモが発生しており、外交交渉会議に出席する赤尾の身に危険が迫る恐れがあるという。ケンブリッジに赴任した月子は、かつてロシア大使館で一緒に働いていた山県とそこで再会する。  一方、日本では向日葵警察署の刑事課に勤務する太巻巡査長が帰宅途中の向日葵署管内路上で不審遺体を発見する。現場に残っていた遺留品や証拠品から被害者は某大学医学部教授、長峰だと判明。  その殺人容疑者として山県が浮かび上がってきたが、その矢先に山県がケンブリッジで飛び降り自殺をしたとの報が入る。現地に派遣された太巻巡査長に付添われて、山県の娘で高校生の充希によって死体の身元を確認されたために被疑者死亡により捜査本部は程なく解散、捜査打切りとなった。  ところが、月子は後日偶然にもケンブリッジ国際空港のジャージー島方面出発ゲートで山県らしき人物を目撃する。事実関係を調べるために朽葉室長に外務省ジャージー課にポストを用意してもらい、月子は10年ぶりに日本へ帰って来る。  
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