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3 29歳
俺は大学卒業後、地獄の存在を知った。最初に就職した印刷会社がブラック企業で、残業が毎日のように続き、徹夜もザラにあった。
2年目の夏、社長が病死しボーナスもなくなった。そして、11月……俺のストレスは最高潮に達し会社を辞めた。
それから、10社以上も職を転々とすることとなった。2020年4月1日、俺は京都駅近くにあるネット喫茶を塒にしていた。
2年前に親に勘当され、最初はアパート暮らしをしていたが家賃を払えなくなり、この生活になった。スマホの時計を見た。7:05、そろそろ飯にするか。店内でタラコおにぎりを買い、自販機でホットの緑茶を買った。無料なのでありがたい。ブースに戻り、テレビを見ながらおにぎりをかじる。砂の味がした。
【臨時ニュースをお伝えします。】
ヘッドホンから緊迫した男性アナウンサーの声が聞こえる。
【織田首相は、派遣社員の犯罪合法化を本日から施工すると先程、発表されました。】
俺はガッツポーズを決めた。
やるじゃん!織田ちゃん!
こんな、糞みたいな生活はもうゴメンだ!
俺はダガーナイフをリュックから出して、カウンターに向かった。
「おらぁ!金をだせぇ!俺は派遣だぞ!」「 助けて!命だけは…」
涙ながらに男性店員が命乞いをする。20万をゲットし、ファミレスで朝食セットを頼んだ。
目玉焼きがマジで旨かった。
「派遣だから、タダにしろよ!」
ウェイトレスを恫喝して、無銭飲食に成功した。俺は『グリフォン』という派遣会社から『カイン電子』に派遣されていた。
スマホのメモリーチップを製造をしているが、ボーナスは出ないし、ロクに口も聞いてもらえないし冷遇されていた。駅からバスに乗り工場に向かう。
バスは超満員だった。
「あれ、里見?」
派遣仲間の山崎が肩をポンと叩いた。 彼の正体は新選組のスパイ的存在の山崎丞だ。小柄な山崎は猿にそっくりだった。
「山ちゃん」
「ニュース見たか?」
「見た」
山崎が耳打ちする。
「実は拳銃買ったんだ。一緒にを殺さないか?」
山崎が買ったのはイタリア製のオートマチック拳銃だ。
工場に到着すると、2人は人事部長室に向かった。神経質そうな、狐みたいな顔の鮫島の顔が歪んだ。
山崎がベレッタを抜き、撃鉄を起こしたのだ。
「今まで散々こけにしてくれたよな?」 俺はハサミで電話線をちょんぎった。
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