トロイの木馬

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第一章【トロイの木馬】  「特に故障はしていないようです。カメラの方も確認して見て大丈夫でしたので、これで失礼します」  「ありがとうございました」  ペコリと帽子を被ったまま頭を下げて出て行った眼鏡の男を見送った後、カメラの動きを確認してみると、確かにそこには正常に映っている画面があった。  いきなり画面が真っ黒になってしまったため、すぐに説明書を読んで試してみたのだが直らなかった。  そのため、業者を呼んで直してもらったのだが、やはりその方が速かった。  「どうだ?」  そこへ、1人の男が入ってきた。  その男は黄土の短い髪をしているのだが、前髪はなぜか薄紫色、そして向かって左側の一部青メッシュという不思議な髪の毛をしている。  「直ってます。これでちゃんと監視出来ます」  「そうか」  男の名は杉原潦太という。  彼は警察官で、見た目は派手そうなのだがまあまあ真面目な方だが、冗談にもまあまあ乗ってくれるときがある。  そのとき、監視カメラルームの扉が開いた。  杉原は開いたドアの方を見ることもなくこう言った。  「臭う」  「これでもダメ?」  「鼻がもげる」  「そこまで?」  すると、そこへもう1人の男が現れた。  「お前も臭うぞ」  「はあ?煙草の臭いくらいでいちいちうるせぇなぁ。だいたい、喫煙場所が遠すぎるんだよ。なんでここで働いてるのに敷地外でしか吸えねえんだよ。ありえねぇって」  「俺が臭いに五月蠅いのは前からだ」  そう言いながら、杉原は自分の鼻を自分の洋服で覆った。  カメラが正常に動いていることを確認した杉原は、その場にいる男たちに何やら指示を出し、再びカメラに目を向ける。  「矢岡、カメラが止まってた間の異常はないだろうな」  「大丈夫。予備のカメラで見てたから」  矢岡と呼ばれた男は、茶色の長い髪の毛を後ろで1つに縛っており、仕事中はいつも頭にバンダナを巻いている。  邪魔ならば切ってしまえと言われたのだが、どうやら彼なりのポリシーがあるらしく、なかなか切ろうとしない。  システム関係の仕事を任されている。  椅子の上で胡坐をかいているのは癖のようで、杉原には何度か注意されたのだが一向に直らないため、今では言われる事はない。  「そう言えば、あいつらは?」  「もうすぐ帰ってくる予定だ。それより、北代昭也の方を探るぞ」
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