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「ただいまー」
「俺もただいまー」
「ダブルでおかえりー」
ここは、街の中心にあるごく普通の家だ。
ただ変わっていることとすれば、この家には数人の男たちが一緒に暮らしているということくらいだろうか。
今帰ってきた2人の男は2人ともスモーカーらしく、帰ってきて早々ベランダに出て行き、煙草を吸っていた。
一方、そんな2人を迎え入れた男は3人いた。
まず帰ってきた2人のうち1人は、青髪で後頭部がちょっと癖っ毛の茜順一という男で、もう1人は茶色のさらっとした髪でいつもタートルネックを着ている美波薫だ。
家で待っていた3人の方はというと、1人は青の短髪で右頬に絆創膏を貼っている、藤邑大機という男。
1人は黒髪で難しい顔をしている布瀬晋平、そして最後の1人は黒髪で目が少し隠れてしまっている庵道啓志だ。
ベランダで煙草を吸っている2人は、肩身の狭い思いをしていると言いつつも、煙草を止める心算はさらさらないらしい。
「薫、今日はあんまり香らないな」
「え?ああ、本当だ」
順一に言われ、薫は自分の身体をクンクンと嗅いでみると、いつもは洋服から香っているラベンダーがあまり香らなかった。
洗剤が少なかったのかもしれないと、薫は再び煙草を吸う。
「ま、別に俺はどっちでもいいけど」
「そりゃそうだ」
何本か吸ったあと、順一と薫は部屋の中に戻って行った。
「戻ってそうそう悪いけど、順一と薫、また出かけてくれ」
「わかった。あれ?啓志も出かけるの?」
「ああ、ちょっとな。2、3時間で戻れるとは思う」
「杉原、戻ったぞ」
カメラの画面から何かの資料に視線を変えていた杉原のもとに、2人の男がやってきた。
1人は緑の髪に首にホクロがある百合澤保、そしてもう1人は黄土色の髪に短く後ろで1つに縛っている、そしてなぜか一部だけ濃い黄土色の部分がある櫻井夕貴だ。
百合澤は先程のことがあるからか、杉原にあまり近づかないでおこうと距離を取るも、この部屋に入った時点で杉原は百合澤を睨みながら鼻をつまんでいた。
傲慢で自信家な百合澤だが、杉原に頭が上がらないのは、杉原の方が役職が上だからだろう。
こうしてタメ口が出来るのは、杉原と同期であって、杉原がタメ口でも構わないと言ってくれたお陰でもあるのだが、やはり睨みは怖い。
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