七章

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校門の学校の名前が刻み込んである表札の隣には必ず桜の木が植えてある。夏には生き生きとした緑の葉っぱが学生たちを日光から守ってくれている。    初めて桜が春以外にも景色を彩っていることを知った。一際良いポジションに植えてあるその桜の木の下に彼女は立っていた。こちらに気付いている様子はない。  誰かを探している彼女の横から自然に、用なんてないという顔をして近づいていき、軽く脅かした。彼女はびくっとして一歩離れて俺を睨む。 「びっくりした…。えっと、人違いじゃないですか? 」 「そんなわけないだろ。さ、早く帰るぞ」  軽く腰を落として臨戦態勢の彼女は元からある身長差をさらに深めて上目遣いでこちらを警戒している。    そんな彼女を置いて歩き出すと、少しの間を置いて隣まで小走りで追いかけてくる。先週の金曜日は人一人分ほどだった二人の距離は土日を置いたせいか少し溝が深まっていた。 「驚いたじゃあないですか先輩。初めて会った間柄なのに、もしかして女の子との接し方分からないとか言わないですよね」 「ああ、全く分からない。それよりも、初めてあった人に付いて行っちゃいけないって教わらなかったのか」 「一緒に帰らない? 」面白そうに聞いてくる。 「帰る」その答えに彼女は嬉しそうに頷いた。  思春期を迎えていた自分は彼女の言う通りもっぱら女性とのかかわり方を見失っていた。  しかし、彼女と喋るときは意外と平静を保てていた。ガールフレンドというような感覚ではなく、妹分のような接し方をしていたせいかもしれない。    だが妹分であるはずの彼女を欲している自分がいる。俺は俺の中に違う人格が存在しているような気がしてならなかった。 「催促するのはあまり気が進まないけれど、早めに答えをくれると助かる」 「今じゃないとダメですか? 私としては初めて会った人にそこまで気を許せないのですが」 「いつまでその設定は続く」そう言うと彼女は困ったように笑って言った。「実を言うと土日で全部忘れちゃって」 「面白くない冗談だ」 「勇気をもって告白してみたのですが、ダメみたいですね」 彼女は立ち止まって、一度大きく深呼吸する。「いいですよ、今度の日曜にでも遊びに行きましょう」  俺は彼女に見えないようにガッツポーズを決め込んだ。
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