一章

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 分厚い白い雲が二割に、どこまでも澄んだ青がどこまでも広がっている。こんなにも世界は綺麗だったのかとひとり呟く。    初めて授業を抜け出して、体験する午後の昼下がりは、何とも言えない背徳感も相まって言い知れぬ快感をもたらしていた。  とは言っても勉強という義務を抜け出している訳であるから、手持無沙汰になってしまっていた。こんなことなら携帯か本でも持ってこればよかったと後悔したが、後悔してもそれが手に入るわけじゃない。    行くあてもないから、校内をどことなく探索することにした。    教室内から声が漏れ聞こえてくる場所は避けて歩いて行くと、技術室や音楽室といったところが施錠されずに開きっぱなしなっていた。    窓から差し込む光が空中をわずかに照らし、寂寥感を巻き起こす。ただそこは教育をするという観点においてフォーカスされた場所であって、一人の時間を過ごすことには使えないということが分かっただけだった。  そうして歩いているうちに、特別支援学級の教室を見つけた。    確かこの学校の特別支援学級は「ひまわり組」だったはずである。ちらと中を覗いてみると、様々な学年の少年少女がそこにはいた。    様々な理由で(俺には一生分からないだろうが)ここに集まった人たちは、一目で障害を患っているのだろうとわかる人もいれば、傍目には健康そのものと思われる人もいた。  中にはヘッドギアのようなものを被っている人もいる。自分が健康に生まれてきたことに何故か罪悪感を抱いたのも、この時が初めてだった。    どうして自分が罪悪感を抱かなくてはならないのだろうか。彼らが特別支援学級に通っているからと言って、俺には何の関係のないことなのに。しかし、彼らを見ていると生まれながらにして明確な差が存在することを思わずにはいられなかった。  その教室を見ていることにも飽きてそこから離れた。そして角を曲がるときに小さな体にぶつかった。思いもよらぬ衝撃だった。    しかし、俺には小さな衝撃も彼女には大きな衝撃だった。彼女を起こして、擦れ違う。   チャイムにより授業が終わってから教室に入ると、俺は数人の友人の輪に入っていく。そのまま普段の日常に戻っていった。    彼女と出会った近くの教室は特別支援学級しかないということに気付いたのは、もう少し後の事だった。
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