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四章
その日の夜、二階の自室の窓から外の景色を眺めながら、今日あったことを思い出した。
そうして思うのは、彼女の美しさを言葉に表現することがとても難しいということだった。
少し遠くでチラリと見た時はただ可愛いと感じただけだったが、近づくと何が自分の心をそんなにも惹きつけているのかが分からなかった。確かに一つ一つのパーツは整っているが、見る角度や、現れる表情によって、とても醜く映るときもあった。
彼女自身のことを聞いてみた時にこの表情が現れることが多かった。
しかし、その醜さはただ醜いというわけではなかった。心をかき乱すような、不安にさせるように美しかったのだ。
家の周りに在るものといえば畑と森。少し距離を空けて一軒家がぽつぽつと立ち並んでいる、それだけだ。
夏はセミが大音量で叫び、秋にはコオロギが合唱を奏でた。
俺は、秋になって気候が涼しくなってくると窓を開けてコオロギの鳴き声を聞きながら眠りにつくのが好きだった。セミは存在を主張しすぎている。
話は変わるが、それから彼女とは廊下や登下校ですれ違う時に軽く挨拶をするような仲になった。
まだどこの学級なのかを聞いたことはなかったが、焦る必要はないと考えていた。
それより自分にはそんなことよりも、気に掛ける必要があることがあった。今週末が陸上部の最後の大会である。
先輩達は最後の大会だったから、日に日に笑い声を聞く機会が少なくなっていき、顔に真剣みを帯びていった。
同時に、先輩達の雰囲気にナイフのような鋭さが混じっていき、自分が矛先にならないように気をつけるようになった。下級生はそのような空気に煽られて自己ベスト更新を達成するために汗を流していた。
しかしそこまで本気になれないというのが、偽らざる自分の本音だった。のらりくらりと日々をこなしている。
この部活動に入ってから、自分が人より物事に対して打ち込めない性格だということが分かった。
将来の仕事もまだ決まっていない。というか仕事なんてしたくはない。
真っ暗な道を一人で歩いている感覚に一人でいると気付いたらはまっている。この道は本当に続いているのだろうか、続いていないとしたら、この場で座り込んでしまえば、一生傷つくことなく過ごせるのかもしれない。そんなことを考えるようになった。
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