7人が本棚に入れています
本棚に追加
「少し、腹減らないか? ついでに何か作ってくる」
「――お前、意外と甲斐甲斐しいんだな」
「相手によるさ」
俺は、横たわったままの隆太郎に唇を重ねてから、服を身に付け、部屋を出た。
扉を閉じた途端、ガクガクと膝が震えた。声を上げないよう唇を噛み、左肩をきつくきつく握りしめた。
-*-*-*-
「遅いと思ったら、ピザ?」
15分後、レンジで温めたマルゲリータと缶ビールを手に部屋に戻った。
「腹に溜まるもの探してて」
デスクに向かっていた隆太郎にタバスコと缶ビールを渡し、空豆色のカウチに腰を下ろした。
「成功に」
俺は缶を掲げてみせた。カツン、と小さな音を鳴らして、互いに喉を潤した。
辛党の隆太郎は、ピザの半円を真っ赤に染めると、早速一切れ口にする。
「隆太郎」
唇を赤く汚した彼は、もう一切れ摘んで旨そうに頬張りながら、チラリと俺を見た。
「お前と聖哉は――兄弟なのか?」
低い位置から睨上げる。彼の動きが止まった。
「颯真……いつから」
「やっぱり、そうか」
しまった――そう言わんばかりに綺麗な二重を細め、薄い唇を歪めた。髪型と眼鏡で印象を変えても、ふとした表情の中に滲む聖哉の面差は隠せない。
「奴は本妻の三男、俺は妾の子だ。この基地は、奴を体よく閉じ込めるための遊び場だ。俺は奴のお守り役。いい加減、うんざりだった」
悪びれず吐き出すと、飲み干した缶をグシャリと潰す。
「俺を犯したのは、聖哉の指示なのか」
「――颯真」
「ずっと、聖哉だと思っていた。その黒子を見るまでは」
隆太郎は、指摘された左手に目を落とす。
「刻まれてる間、腕を押さえつけていた掌を覚えている。レッドの『R』じゃない。これは、隆太郎の頭文字だ!」
フッ、と唇を歪める。冷めた眼差しには、何の感情の色も見えない。
「お前は、忠犬になると思ったんだがな」
「嘘だ。利用して、殺すつもりだったんだろ? 潤司と鈴音のように」
「見たのか」
食堂に向かう途中で、2人の部屋を覗いた。港に向かったというのは嘘で、潤司は吊るされ、鈴音は手首を切られて、どちらも事切れていた。
「じゃあ――仕方ないな」
唇を舐めると、彼はデスクの引き出しからナイフを掴み、チェアから立ち上がり――。
最初のコメントを投稿しよう!