混色の果て

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「少し、腹減らないか? ついでに何か作ってくる」 「――お前、意外と甲斐甲斐しいんだな」 「相手によるさ」  俺は、横たわったままの隆太郎に唇を重ねてから、服を身に付け、部屋を出た。  扉を閉じた途端、ガクガクと膝が震えた。声を上げないよう唇を噛み、左肩をきつくきつく握りしめた。 -*-*-*- 「遅いと思ったら、ピザ?」  15分後、レンジで温めたマルゲリータと缶ビールを手に部屋に戻った。 「腹に溜まるもの探してて」  デスクに向かっていた隆太郎にタバスコと缶ビールを渡し、空豆色のカウチに腰を下ろした。 「成功に」  俺は缶を掲げてみせた。カツン、と小さな音を鳴らして、互いに喉を潤した。  辛党の隆太郎は、ピザの半円を真っ赤に染めると、早速一切れ口にする。 「隆太郎」  唇を赤く汚した彼は、もう一切れ摘んで旨そうに頬張りながら、チラリと俺を見た。 「お前と聖哉は――兄弟なのか?」  低い位置から睨上げる。彼の動きが止まった。 「颯真……いつから」 「やっぱり、そうか」  しまった――そう言わんばかりに綺麗な二重を細め、薄い唇を歪めた。髪型と眼鏡で印象を変えても、ふとした表情の中に滲む聖哉の面差は隠せない。 「奴は本妻の三男、俺は妾の子だ。この基地は、奴を体よく閉じ込めるための遊び場だ。俺は奴のお守り役。いい加減、うんざりだった」  悪びれず吐き出すと、飲み干した缶をグシャリと潰す。 「俺を犯したのは、聖哉の指示なのか」 「――颯真」 「ずっと、聖哉だと思っていた。その黒子を見るまでは」  隆太郎は、指摘された左手に目を落とす。 「刻まれてる間、腕を押さえつけていた掌を覚えている。レッドの『R』じゃない。これは、隆太郎の頭文字(イニシャル)だ!」  フッ、と唇を歪める。冷めた眼差しには、何の感情の色も見えない。 「お前は、忠犬になると思ったんだがな」 「嘘だ。利用して、殺すつもりだったんだろ? 潤司と鈴音のように」 「見たのか」  食堂に向かう途中で、2人の部屋を覗いた。港に向かったというのは嘘で、潤司は吊るされ、鈴音は手首を切られて、どちらも事切れていた。 「じゃあ――仕方ないな」  唇を舐めると、彼はデスクの引き出しからナイフを掴み、チェアから立ち上がり――。
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