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カフェの夢をみた。
駅から続く道を歩いていくと、右側に円筒形のビルがある。二階はガラス張りで、洋服屋のようだ。
合成樹脂のカラフルなテーブルと椅子が並ぶ一階のカフェは、夜になる手前の半端な時間のせいか、空いていた。
僕は入口近くの席に座った。
店内には西陽がかすかに差し込み、手元は少し暗い。
遅れてきたキシが向かい側に座って、何だか嬉しそうな様子で、
「これ、プレゼント」
と、テーブルに小さな箱を置いた。
濃い青の包装紙に、白いリボンがかかっていた。
目が覚めてからしばらくの間、どの駅だったかを思い出そうとしていた。キシとあのカフェに行ったことはあるが、プレゼントを貰ったことはない、と。
そのうち、頭がはっきりしてきた。
キシとカフェに行ったことはない。あの店は、現実には存在しない。駅もない。もちろんプレゼントもなく、全部が夢の中だけにあったのだ。
僕の前に箱を置いたキシの手が、心に刻まれていた。
夢をみた翌日、聞いた? 岸君のこと、という出だしで、女性二人からそれぞれ、キシが辞める理由を聞かされた。
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