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芝田(男だ)と会う時は、待ち合わせてすぐホテルに行って、終わってからお茶を飲むのが、決まりのようになっていた。
キシには「元彼」と言ったが、僕の中では「男」で、セフレという言葉は好きじゃなかった。
ペーパーカップの半分までコーヒーを飲んだ時、芝田に、
「元気ないな」
と言われた。
「何かあったのか?」
「んー、別に。昨日あんま寝てない」
「さっき、寝ててもよかったのに」
「まあ、落ち着かないから」
芝田には、夢の内容を話したことがあった。付き合っていた時だったが、何だよそれ、と話の途中で嫌な顔をして、二度と聞いてこなかった。
僕は芝田に執着し、一緒に住みたい人がいるから別れる、と言われた時は泣いてすがり、別れてしばらくは夜眠れなかった。そのうち彼から連絡が来るようになった。電話で呼び出されると、いつでも会いに行った。
「お前から連絡してくるの珍しいから、話でもあるのかと思って」
と、芝田は言った
「珍しいって、初めてだよ」
「そうか、そうかも。何かあったのか?」
その時、入口の自動ドアが開く気配がして、目をやると、キシが店に入ってきた。一緒にいるのは、営業の佐倉さんだった。
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