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ゴリラが青い。
青いゴリラが群れを成して襲ってくる。
普通自動車のような速さで普通自動車のような重量の物体が迫ってくる。これはもはや普通自動車ではないのか。
普通なのか。
否。
幼き日の記憶によれば、動物園のゴリラの平均身長は一般的な自動販売機くらいだ。だが、あの青いごわごわ毛玉は明らかにベンドするマシーンよりでかい。
オレを乗せたバイクは砂を巻き上げながら一本の道を残していく。
ゴリラは乾いた土をえぐりながら道幅を広げて追いかけてくる。
オレの額の汗は乾燥した荒野の風に奪われていく。
オレは風の抵抗を減らすよう身を屈めてハンドルを握っている。
バイクはわずかな勾配のエネルギーをも得て加速している。
荒野を駆けるゴリラの群れ。逃げるオレ。並走する青い女。
青い…、女…。
いつからいたのか。オレの隣を並走している。
オレはバイクの右ハンドルを全開にして乗ってるんだけどな。
「どちらさまですかー」
女は深い紺色の瞳をこちらに向け、一言も発さずに左手を挙げ、左前方を指さした。
オレの視界は岩山を捉えた。
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