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緩やかな下り坂をなお進み、岩の群れの間をすり抜けていく。 先のとがった岩肌に褐色の砂がまとわりついている。ココアパウダーのかかったチョコレートに見えなくもない。 道幅が狭くなったことでゴリラの足が遅くなった。 「あの、ちょっと」 女は変わらず何も答えない。 吹かし続けたエンジンからガリガリと音がする。燃料メーターは燃料の補給を勧めている。 ****** 荒野の真ん中で尿意をもよおしたのが、そもそもの発端だった。誰も見てやしないのにわざわざ道から外れた岩陰で済まそうとした。 大きな岩の裏側に回り込むとお盆のようにへこんだ土地があった。 褐色のこの地には違和感のある場所だった。 カヤツリグサやミソハギがお盆一体に広がり、岩には苔が生え、中心には青い芝が群生していた。 「湧き水でもあるのか」 芝は風に波打ち、見えない空気の流れを現していた。 見慣れない光景を気にかけるも迫る尿意には勝てず、ついでに年中乾燥している土地に潤いを与えてやろうと芝に近づいた。 ****** オレ由来の水分が顔面にヒットした青い芝こと、ベンドマシーンゴリラどもは怒りの雄叫びを上げ、オレはバイクに飛び乗り、アクセル全開。今に至る。 ぼすっ 何かが真横の岩に当たって爆ぜた。 「なんだ」 フンだ。 やつら、オレとの距離を縮めるために青い糞をベンドしてきやがった。そんなにオレと仲良くしたいのか。どうせならジュースとかにしてください。 あー喉乾いた。 やつらは尖った岩を巻き込みながらさらに勢いを増して迫ってくる。 ガリガリ、と岩の削れる音が山肌に反響する。
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