1人が本棚に入れています
本棚に追加
「リリー、雨が止んだみたいだ」
「やった、これでやっと進めるね」
「喜んでばっかりもいられないな、あれだけの大雨の後だ、地面がぬかるんで靴も汚れるし、足を取られて転んだら酷い恰好になっちゃうね」
「うえー」
二人で雨上がりの悲喜こもごもを味わいながら空を眺めた。雨雲は散り散りになってどこかへ逃げるのに忙しく、青空は大きな身体でそれらを泰然と見下ろしている。
「……昔、船が大陸と大陸を行き来するようになる前に、どこまでも続く広い海を見て、怖気づくことなく旅に出た人達がいて。今もたくさんの船が海へ出かけていく」
テンは立ち上がり、振り返ってリリーに手を差し出した。
「休憩をしていたボクたちも、青い空を見ればまた旅に戻る。……海と空の色って似てるよね。だからさ、二つとも青いのは人が旅に出たくなるような色をわざわざ着てるから、なんじゃないかな」
さっきのリリーの疑問の答え。これじゃダメかな?
流石にカッコつけすぎたと思ったのか、その頬は赤い。リリーはその頬の赤さに夕日を見た。黒い髪に夜空を見た。青い瞳に夜空と──お鍋のコゲを見た。
テンの仕草や姿に、たくさんの色を見た。
「うん。いいと思う。さっきの光がどうこうなんて話よりずっと楽しい」
それぞれの疑問の答えを胸に、手をつなぎ、そのせいで一緒に転びそうになって踏ん張り。
晴空の下、二人は空を映して青く染まる水たまりだらけの大地を歩きだした。
最初のコメントを投稿しよう!